「広島・菊池涼の牙城は崩せる」“守備職人”馬場敏史氏の視点
「三井ゴールデン・グラブ賞」の授賞式が16日、開催された。オリックスの躍進を裏付けるように投手部門で山本、三塁手部門で宗と2選手が選出された。同球団からの選出は2016年、糸井(現阪神)以来5年ぶり。オリックスの三塁手受賞は1996年以来25年ぶりとなった。その時の受賞者であるプロ野球OB・馬場敏史氏(56)が、守備のスペシャリストとして今回のゴールデン・グラブ賞に言葉を寄せた。
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宗の三塁コンバートは正解でしたね。非常に肩が強くて、捕球さえすればアウトが取れる。しかもスタート、ハンドリング、グラブを出すタイミングもいい。だから難しい打球をさばけるんです。
以前はショートをやっていて、外野手登録でもある。なぜ三塁が正解だったかと言うと、打球に対する反応の良さなんですね。ショートの場合は足運びが重要。一方、サードは“瞬間芸”。ショートからサードへのコンバートは簡単なように見えて、実はかなり大変なんです。
私がヤクルトに在籍した時、ちょうどショートとサードを兼任していた、名手の宮本慎也さんが「サードでは(ショートの癖が出て)余計な動きをしてしまうから、バウンドが合わせづらい」と言ってました。
宗はそこを乗り越えて、ゴールデン・グラブ受賞ですから、非常に価値がある働きをしたと思いますよ。
他のポジションを見渡せば、やはりというか、二塁手部門での広島・菊池涼が受賞し、ヤクルト・山田が無念のコメントを残していましたね。
ただ、私の“菊池評”は、さほど高くないんです。もちろん、今のセ・リーグではナンバーワンです。守備範囲の広さなどを見ても、山田を上回っています。
一方で、南米系と言いますか、やや基本をあえて外した、南米系のプレーが少し気になります。ボールが来るところに構えていれば簡単に捕球できる打球も、「おー、あれを捕ったよ」と見せるプレー。
ファンを喜ばせることも大切ですし、そういうプレーをするためには、球際がすごく強くなくてはいけない。つまり非常に高い能力を持っている。それでも、あえて守備の精度を落とす必要はないんじゃないかな、と思うことも、菊池涼を見ていて感じるんですね。
チームスポーツにあって、互いの信頼感は大事。投手が打ち取った打球を確実に処理する。これが信頼になる。必死で守り切る二塁手像、というところへ向けて技術を高めていく選手が出てくれば、菊池涼の「票」を奪うことができるかも知れませんよ。
最後に付け加えたいのですが、“その年よく活躍した選手”だけでゴールデン・グラブ賞に選出されることがあります。名前は出しませんが「守備部門だよ」とツッコミたくなる人もたまにいる。投票される記者の皆さんにも、高い意識を持っていただくことで、この賞がさらに価値あるものとなるように思います。