オリックス“西浦のために”息吹き返した9月 円陣で宗が訴え「僕らは勝たないといけない」

 担当記者が自軍の今季を総括する企画「21年あの瞬間」第8回はオリックス。25年ぶりの優勝への道のりは簡単ではなかった。9月、首位陥落に沈むチームに西浦颯大外野手(22)の引退発表のニュースが飛び込む。将来有望な選手が難病のために夢を絶たれるという衝撃に宗佑磨外野手(25)が立ち上がった。

  ◇  ◇

 9月は苦しんだ。吉田正が3日のソフトバンク戦で左太ももを痛めて5日に離脱。主砲を欠いたチームは不安定な戦いが続き、首位転落。そんな中、連敗で迎えた25日の楽天戦(京セラ)の試合前だった。円陣で宗が訴えた。

 「昨日、一緒にやってきた西浦君が引退を発表しました。彼みたいに野球がしたくても野球ができなくなることがあります。いつなるか分からないんです。全員、熱い気持ちを持って一試合一試合取り組んでいってください。きょうも絶対に勝ちます。僕らは勝たないといけないんです。最後まで諦めず戦っていきましょう!」

 4年目の西浦が前日に難病の両側特発性大腿骨頭壊死症のため引退を発表したばかりだった。

 この試合、宗が先制弾でチームを鼓舞すれば、エース山本は8回2失点で自身12連勝。久々に投打がかみ合った。

 翌26日、中嶋監督は西浦を京セラドームに呼んだ。育成選手になる前の背番号00のユニホームが用意されていた。もちろんプレーはできない。悔しい思いを円陣で吐露させた。

 「僕のためと思って優勝してください!優勝してもらわないと困ります」

 ここから勢いを取り戻し8連勝で首位奪還。分岐点となった。

 優勝経験があるのは能見兼任投手コーチと増井くらい。25年も優勝から遠ざかっていたチーム、優勝争いの経験すらなかった。困難を乗り切るすべを見つけられない中、“西浦のために”を合言葉に結束し、勢いを取り戻していった。

 2年連続最下位からの優勝という偉業。実はチーム打率は昨季と同じ・247。犠打数、盗塁数は減った。効率の良い攻めで得点を重ね、強力先発陣を前面に出した守りで勝ちきった。技術だけでなく、中嶋監督は目に見えない精神面のフォローも忘れなかった。結果、“全員で勝つ”のスローガンの通り悲願に達した。(デイリースポーツ・オリックス担当・達野淳司)

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