侍・栗山監督 WBC制覇の必要条件「特にスピード」「(阪神)中野君本当に楽しみ」
野球日本代表「侍ジャパン」の栗山英樹監督(60)が、デイリースポーツの新年インタビューに応じた。23年にも開催される予定の第5回WBCへ向け、阪神・佐藤輝明内野手(22)や中野拓夢内野手(25)ら若い力の台頭を期待した。【その1】
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-日本ハムの監督を退任してすぐに代表監督就任。忙しい年末年始を過ごしたのでは。
「ものすごくバタバタしていますね。ここまでずっと合間がなく動き回るというのは、ちょっと今年に関しては動きが全く違う感じになっています」
-23年のWBC優勝が最大の目標。現場で見た06、09年大会で印象に残ったことは。
「勝ちきった時の感動はもちろん、王さんや原さんが喜ばれている姿はすごく印象に残っています。ただ、そこまでの経緯が僕ら野球人としては学べるところでもあったので。こうやって流れが変わるんだとか、そういう部分を感じることが多かったですね」
-印象深い試合は。
「一番印象に残っているのは1回目の大会の時に、米国がメキシコに勝ったら日本が最後のラウンドに行けないところでメキシコが勝った試合。国際大会は何が起こるのか分からない。野球の怖さも感じました」
-各国と戦う上での日本の強みは。
「小事が大事を生む。みんなが守備位置を一歩変えることを意識してチーム全体が動くとか、どうやってランナーを送るのかとか。小さな積み重ねが大きな結果を残せるっていうのが日本野球だと僕は思っています」
-複数ポジションできる選手も必要か。
「ベンチにいる中には複数ポジションできたりとか、たくさんできる人が多い方が良いに決まってますよね。ただ、特にスピードのある選手っていうのは必要なんだろうなとは思っています」
-WBCまで試合数が少ない。3月の台湾戦はベストメンバーで臨むのか、若い選手を試す場とするのか。
「WBCで勝つことが最大の目標であるし、その目的でチームは作られると思うので、そのことは両方考えながら悩んでいきたいと思いますね」
-すべての選手にチャンスがある中で、阪神も若手が台頭した。
「WBCで勝つためには、若い子たちが一気に駆け上がる状況でプラスアルファの大きな勢い、流れをもたらしてくれないと(前回優勝の)米国をやっつけられない。本当に駆け上がってくる力を持った選手が何人出てくるのだろうか。そこは絶対条件になってくる」
-阪神・佐藤輝も注目する存在の一人か。
「間違いなくその一人だと思う。ただ去年は前半であれだけの数字を残しながら、後半に苦しんだ。プロ野球は簡単ではないというのは理解しながら、そういう要因を含めて。もちろん、非常に楽しみな選手であることは間違いない」
-スピードが大事と話したが盗塁王2度の阪神・近本の評価は。
「近本君に関してはスピードはもちろん、あれだけのバットコントロールがある。ストライクゾーンが変わってもボールが動いても(対応できる)というのがありますね」
-阪神・中野も新人で盗塁王に輝いた。
「中野君は東北福祉大の時から大塚監督から話を聞いていた。やっぱりこういう選手なんだと実感したし、非常に良い選手。特徴的にスピードがある選手は間違いなく必要なので、本当に楽しみにしています」
-スピードの重要性とはどの部分か。
「過去の例を見ても一つの盗塁、動きが勝敗を決める可能性もある。そういうタイプの選手で近本君や中野君は決して足だけではない。レギュラーを張りながら足も使える。全部を使えるのが理想なので。日本が勝ちきるには、細かいことをきっちりできる人が集まった方が確率は高いかなと。そんな印象はありますよね」
-13年WBCの台湾戦でも鳥谷の盗塁から切り崩した場面があった。厳しい場面で結果を出せる選手は重要。
「そうですね。追い込まれれば追い込まれるほどみんな力むんだけど、そこで結果が出やすい選手と、能力は高いが環境が違うと結果が出づらい選手がいる。そういうものは見ていきます」
-その他に代表として必要な要素は。
「野球に対して一生懸命取り組む姿、熱さ、魂がある。最後に野球の神様は、そういう選手に味方をするんだと思っているところもあるので。もちろん勝負強さも見ていきますけど、普段の取り組み、生活の仕方もなるべく情報を持ちながら、みんなが力を与える選手が集まってほしいなとは思いますね」
-東京五輪メンバーも日の丸への思いをより深めている。
「例えば青柳投手みたいに能力があって、シーズンで結果を残して、悔しい思いをした。逆にそういう思いは僕にとってはすごく大事。今度は見てろよ、やり返すぞという気持ちで野球をやっているように見えるので」
-梅野と岩崎に関してはどう見ているか。
「梅ちゃんは非常に能力のあるキャッチャーだし、バランスが良いですよね。あれだけ走攻守のバランスが良いキャッチャーはなかなかいない。岩崎君は日本ハムでも(ドラフトで)すごく欲しかった選手。あの(打者とのタイミングが)ズレる感じは野球界になかなかいない。冷静にそういうのを加味しながら、夢のあるチームでね。米国野球をやっつけようぜ、日本の野球はこうなんだっていう、そういうチームにできたらうれしいなと思いますけど」