近江・山田 代替出場で準V「次こそは日本一を」 執念志願先発も三回途中自ら降板
「選抜高校野球・決勝、大阪桐蔭18-1近江」(31日、甲子園球場)
代替出場の近江は大阪桐蔭に敗れて準優勝。同校と滋賀県勢にとって初の甲子園制覇を逃した。30日の準決勝で左足に死球を受けながら170球完投した山田陽翔投手(3年)が先発するも三回途中で降板。多賀章仁監督(62)は「回避すべきだった」と後悔し、エースに続く投手育成を課題に挙げた。
悔いはない。左足に痛みを抱えていたエースで主将の山田が先発し、2回0/3を3安打4失点。「日本一という壁は自分たちにはまだまだ高い壁だなと思った」。滋賀県勢として悲願の甲子園での頂点は逃したが、代替出場では初、近江としてセンバツ初の準優勝。胸を張れる結果だ。
執念の登板だった。前日の準決勝は左足首に死球を受けながら、170球で完投した。打撲と診断されたが、この日の朝に多賀監督に先発を志願。球場入りでは足を引きずる様子を見せ、テーピングで固めてマウンドに上がった。
王者の強さを痛感した。初回は味方の失策、二回は四球からのピンチでそれぞれ1点ずつを失った。三回には先頭に死球で無死一塁。続く3番・松尾に2ランを被弾した。「松尾君で最後にしようと思っていた。これ以上チームに迷惑を掛けるわけにはいかない」と、最後は主将の責任感で自らタイムをとり、ベンチの多賀監督へ交代の合図を送った。
昨秋は右肘痛で登板できなかった。京都国際の代替で開幕3日前に出場が決まった今大会。大黒柱は4試合連続完投でこの日が5試合目だった。
意思を尊重した多賀監督もまた心の痛みを抱えていた。「やはり回避すべきだった。彼の将来を見たときに、今日先発させるのは間違いだった」と悔やんだが、他に選択肢がなかったことも事実。「山田に次ぐ投手をつくっていくのがより鮮明な課題になった」と夏へ宿題を残した。
京都国際への思いも抱えて戦った春の甲子園。山田は「自分がマウンドを守り切れなかったのが悔しい」と決勝での大敗に唇をかんだが「強いチームにはすごく燃えるのでまたやってみたい。次こそは日本一を」と力強く宣言した。主将の魂が消えない限り、近江はまだまだ強くなる。