巨人・大勢 剛球の原点 独自フォームはこうして生まれた 高校時代の恩師が証言

 巨人・大勢
 巨人・大勢の成長過程を語る京都共栄学園・木谷忠弘野球部長
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 西脇工時代に巨人のドラフト1位・大勢投手(22)=関西国際大=を指導した木谷忠弘氏(48)がデイリースポーツのインタビューに応じた。木谷氏は4月1日付で京都共栄学園の野球部長に就任。神前俊彦監督(66)との二人三脚で甲子園を目指している同氏が、1年目から巨人のクローザーとして活躍する右腕の成長過程を振り返った。

  ◇  ◇

 木谷部長は真っ先にこう言った。

 「私は大勢に言うんですよ。“オレはお前を育てたなんて一切言わんから”と。見てくれたのは専門のスタッフですから」

 そしてこう続ける。

 「教え子などと言うのもおこがましいほど、彼は大学で伸びたんです」

 関西国際大学からドラフト1位で巨人に入団した大勢は、新人ながら早くも1勝11セーブを記録し、首位快走の原動力になっている。

 武器は158キロの直球とフォークボール。スリークオーターとサイドハンドの中間と表現される独特の腕の位置から繰り出される“剛球”がくせ者だ。

 では西脇工時代、その片鱗はあったのか。

 よく比較されるのが2013年夏の甲子園大会に初出場したときのエースである兄・勝基さんとの違い。

 「兄はコントロールがよくて、絶対的な武器になるフォークボールの精度は高校生の中でもピカ一でした。大勢はポテンシャルがものすごく高く、将来性という部分でスカウトの方の評価をいただいた。もちろん巨人も」

 では投球フォームも今と同じだったのか。

 「腕の位置は3年の夏が終わってから下げたんです。もともと腰の回転が横だったので(下げた方が)スムーズかなと。この腕の長さで横の方から手が出てきたら打者は嫌だろうなと。コーチの進言もあって、変わらずに速い球が放れるんならということで」

 感触は?

 「球威も落ちず、フォークもそっちの方が投げやすいということでした。さらに大学のコーチに改善を加えていただき、最終的に今の形へと」

 大勢が本格的に投手に取り組んだのは2年秋から。もともと上手投げだったが、上半身と下半身の連動が悪く投球フォームに無理が生じていた。その原因が腰の回転運動にあったという。

 理学療法士に依頼してバランスの改善に努めたが、最終的には大学進学も含めた将来を考え、フォームの改造に踏み切った。

 ただ投球フォームにメスを入れるには重大な決断が必要だったため、高3夏を終えた秋を待って着手した。

 その2017年秋は「おぼろげながらも」期待していたドラフト指名が無情にも見送られた。木谷部長は大勢の心情を推し量ってこう話す。

 「悔しさというか、現実を突きつけられたようでしたね。4年後(大学を経て)プロ野球選手になりますと明言してましたから」

 その誓いを1位指名という評価で示した。

 「大勢は常に自分を周囲の評価より下に見ながら努力していくタイプ。納得できるプレーや投球動作など、それが完成すればこうなるはずだと、堅実に努力できる選手。それを大学4年間で示してもらった。めちゃくちゃ伸びましたから」

 研究熱心で理論派?

 「本人がこだわっているのは体の細かい動き。ボールの回転軸がしっかり立っているかなど。自分が描いているとおりに投げることができれば、ボールの回転数が上がると考えている」

 球速はどこまで伸びるのだろうか。

 「本人は、160キロはそのうち出るだろうけど(求めているのは)速さではないと、ずっと言ってます。もっといい球を投げられるとも。大学3年の後半、一緒に話をしたときは賢くなってましたね。高校時代の取り組みが甘かったとも」

 大勢はウエートトレが夜遅くまで長引いたことで、4月19日・広島戦の投球に影響したことがあった。

 「今は進化するのがうれしいのか、結果よりも過程を楽しんでいるようです。彼は手がかなり大きいのでスピンをかける負荷が相当強い。その指の長さで質のいいボールを投げたい。とんでもない進化版が佐々木朗希。打者からすると今まで経験したことのないボールの軌道、回転なのでしょう。ホップ幅が違ってバットに当たらない。その理想に近づけるには体力が必要。だから夜中までウエートをやってるのかも」

 高校時代から追いかけていた巨人が昨年のドラフト会議で1位指名した際、「翁田ってだれ?」という声が聞こえてきた。

 だが、その世間の疑問を最も理解していたのは、ほかのだれでもない大勢自身だったと木谷部長は言う。

 「謙虚な性格だからそれで“もっといい投手になりたい”という気持ちになったんだと思います」

 木谷部長は最後に心を込めたエールを“教え子”に贈った。

 「大勢は今、単にいい投球をするのではなく、いい投手になりたくて、そしてたくさんの人に喜んでもらうために野球をやっていると思う。その気持ちを持ち続け、どんどん進化を遂げていってほしい。まだまだ伸びしろがあると信じてます」

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