京大・近田監督 データ&数字で勇気づけ あいさつ!遅刻と忘れ物しない!で組織作り

 投内連係の練習後、選手が納得するまで話し合う京大・近田怜王監督。話し合いは20分にも及んだ(撮影・吉澤敬太)
 京都大学と印字されたボールを手に笑顔を見せる山下智茂氏(左)と京大・近田怜王監督
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 今春の関西学生野球リーグで、終盤まで上位争いに加わった末に5位となった京大。今季から就任した近田怜王監督(32)は、元プロ野球ソフトバンク投手で社会人のJR西日本でもプレーした。星稜名誉監督の山下智茂氏(77)が、高校球界の名将を訪ねる「球道者を訪ねて」の特別編として京大を訪問。報徳学園時代から知る近田監督に躍進の裏側を聞いた。

  ◇  ◇

 山下智茂氏(以下、山下)「(星稜が)センバツに行った時には(近田監督の母校、報徳学園に練習試合で)お世話になって、いつも負けているんですよ。近田監督には本塁打を打たれました。京大監督になられたと聞いて驚きましたが、プロや社会人の経験は生かされていますか」

 近田怜王監督(以下、近田)「技術面はプロ(経験)ですが、指導者としてはトーナメント1試合にかける社会人野球の方ですね」

 -ソフトバンクを戦力外になり、当時総監督の後藤寿彦氏の誘いで社会人野球のJR西日本へ。引退後に駅員として社業に専念していたところ、元京大監督で同社の長谷川勝洋氏から指導を託されるなどしてコーチ、助監督、昨年11月から監督を務める。

 近田「三宮駅で駅員として接客する中で多くを学びました。野球以外のところで怒られたりお褒めをいただいたりするのが大きかった。幅広い年齢層の方とお会いしました」

 山下「自分は元プロ選手だと思ってやっていたら、今の立場にはいなかったでしょう。会社のために働いていた姿が認められたんだと思います」

 -1軍に上がれない重圧もあった。

 近田「プロで上には上がいるというのを見せつけられたのが大きかったですね。プロに入ってからが一番練習しました。技術もそうですけど、メンタル的に鍛えられましたね」

 山下「京大生への指導は大変では」

 近田「私学の野球をガッツリしてきた人間なので理論を先に立てる学生たちに受け入れてもらえるのかと思いましたが、意外と受け入れてもらえました」

 山下「選手にはデータ係とかがいると」

 近田「データには力を入れています。今季は走塁に力を入れました。盗塁は勇気だと思いますが、彼らを勇気づけるのには数字が一番。相手の癖などデータや数字の根拠がないと納得しない。自分たちでもそれを理解していていろいろ数字を集めています。(リーグの相手は)5大学あるので、選手を5つに分けて研究しています」

 山下「僕も(星稜では)中学から大学まで教えているんですけど、大学生はあと一歩のところで負ける。福井工大などは研究がすごいので、勝ったと思っても球際で捕られる」

 -今季京大は極端なシフトをとることも。

 近田「守備は、間違えてもいいからデータどおりに守備位置を配置して、抜けたら仕方ないと割り切ってやっています。学生が実際に意見を出してくれるので助かっています」

 山下「そこが高校野球との違いですね。僕は母校の門前で部員9人から教えていますが、みんなの気持ちを一つにしないと動かない。生徒の気持ちを取り入れると勝っていく」

 近田「監督に就任して最初にお願いしたのが、あいさつをすることと遅刻と忘れ物しないこと。それができない選手は使いませんと言いました。ボールが箱に120球あるんですが、きちんと数えるようにとも。自分たちの決めごとができて初めて組織の軸ができてくると思う。野球をやっているんだから野球で勝たなあかん。僕は高卒ですが、勉強だけできてもダメだと伝えるようにしています」

 山下「他大学は甲子園に出場した選手も多いけど、京大はほぼ進学校。それでも勝てるのはなぜでしょう」

 近田「勝ってやるという気持ちもあるんですけど、高校の時にテレビで見ていた選手と対戦できて楽しいという気持ちはあると思います。また(リーグ戦を)甲子園でやれるので、高校時代を取り戻せるという子もいる」

 山下「その喜びは力以上のものを出せる。打撃投手もするとか」

 近田「僕は投手だったので、投手目線でなぜ打てないか、そういう配球しかこないという言い方もできる。苦手なところを攻めて、打てないでしょと納得させるような方法もとります。選手の心をつかむ指導の要点は、あるのでしょうか」

 山下「僕は自分の経験だけ。こうやって失敗した、こうやって成功したと。あとは本音でぶつかりました。俺はこの1球に命をかけてノックを打っているんだから、お前らも真剣に受けてくれよと」

 -監督として夢は。

 近田「夢というか、目標として神宮に行きたいと思っています」

 山下「見た目は高校時代と全然変わらない。でもあの頃より目がキラキラしてるなあ」

 ◆近田 怜王(ちかだ・れお)1990年4月30日生まれ、32歳。兵庫県出身。現役時代は左投げ左打ちの投手。報徳学園から2008年度ドラフト3位でソフトバンク入団。NPBでは1軍出場なし。12年10月に戦力外通告を受け、13年にJR西日本へ入社して社会人野球でプレー。17年から京大の臨時コーチを務め、21年11月に監督就任。

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