近江・山田 マー君、佑ちゃん超えた!甲子園9勝 後輩の復帰まで「『勝つ』と言った」
「全国高校野球選手権・2回戦、近江8-3鶴岡東」(12日、甲子園球場)
滋賀県勢初の日本一を狙う近江が3季連続の16強入りを果たした。原動力となったのはエースで4番の主将・山田陽翔投手(3年)だ。11安打3失点で完投し、勝ち越し打を放つなど投打に躍動した。この勝利で駒大苫小牧・田中(現楽天)、早実・斎藤(元日本ハム)らを抜く甲子園通算9勝目。今秋ドラフト候補に挙がる大黒柱が、聖地でもチームをけん引した。
勝利の瞬間を迎えると、山田は強く握った右手の拳を2度振った。これぞ大黒柱の仕事。どれだけ苦しくても、懸命に前を向いた。耐えて、粘って、自らのバットで流れを呼び込みつかんだ白星。相手を圧倒する気迫で勝利に導いた。
「高めに浮いた球というのは(鶴岡東は)打撃が売りなだけに、見逃してくれなかった。簡単にホームランを打たれてしまったところは1番の反省」
唇をかんだのは、2発のアーチについて。1点リードの三回、先頭打者に高めに浮いた直球を、無死一塁では2番打者にスライダーをスタンドに運ばれ勝ち越しの2ランを被弾した。ただ、この回以降はすぐさま修正。六回まで毎回三振を奪うなど、計12奪三振で追加点を許さず。ダルビッシュ有(東北)の87奪三振を抜く、甲子園通算89奪三振となった。
4番として、バットでも勝利への執念を見せた。「自分で自分を救った」と、同点の三回無死一、二塁では、勝ち越しの左翼線適時二塁打を放ち、主導権を奪い返した。
後輩の思いも背負い臨んだ試合。体調不良で遊撃のレギュラーである横田悟内野手(2年)が登録から外れた。「横田が復帰できるのが準決勝から。『そこまで勝つから準備をしておけ』と言った。言った以上、負けるわけにはいかないので意地で勝ちました」と先輩として約束を果たした。
2年夏に初めて甲子園のマウンドに立ち、この日で12試合目。149球の完投勝利で通算9勝となり、駒大苫小牧・田中将大(現楽天)、早実・斎藤佑樹(元日本ハム)の8勝を上回った。
夏の戦いはまだ終わらない。「しっかり準備をして次の試合を迎えたい」と山田。悲願達成へまた一歩進んだ。日本一を目指す輪の中心に頼れる主将がいる。
◆甲子園通算勝利数 48年の学制改革後の甲子園個人最多勝利は桑田真澄(PL学園)の20勝。石井毅(箕島)14勝、荒木大輔(早実)、三浦将明(横浜商)12勝、松坂大輔(横浜)、島袋洋奨(興南)11勝と続く。近年では15年夏に平沼翔太(敦賀気比)が10勝に到達。田中将大(駒大苫小牧)、斎藤佑樹(早実)はともに8勝。戦前の最多勝利は吉田正男(中京商)の22勝。