怪投2面相?の阪神・藤浪 入団以来最高の投球後に落とし穴 高代氏「もったいない」
「阪神0-2中日」(13日、京セラドーム大阪)
阪神・藤浪晋太郎投手(28)が安定感のある投球をしながら打線の援護に恵まれず、今季初勝利に手が届かなかった。チームは完封負けで5連敗。デイリースポーツウェブ評論家の高代延博氏は「プロ入り最高の投球」と評価する一方で、「落とし穴にはまった感じだ」と唯一の失点に言及した。
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藤浪の投球は抜群だった。ここ数年というより、入団以来最高の投球をしたと思うね。
フォームのバランスがよくてリキみが見られず、無四球が示すとおり、直球を中心にしたコントロールが非常によかった。
(藤浪は先発して7回を4安打1失点。無四球で10個の三振を奪った)
フォークの落ちも素晴らしく、崩れるような様子はなかった。
2015年に14勝したころは四球はあったし、勝っている試合でもどこかの段階で“危険なニオイ”がしたものだ。
しかし、この試合ではそんな空気を感じることはなく“最後までいける”という雰囲気が伝わってきた。
だから、よかったころの藤浪に戻ったというよりも、抜け球のない“こんな投球ができる”という新たね一面を見た気がする。
ただ、そういう見事な投球をしただけに、勝利投手になってほしかったね。問題は四回の攻撃だ。
この回は無死二、三塁の状況で4番の佐藤輝に打席が回ってきたが、追い込まれたあと外角のチェンジアップを振らされて三振した。
1打席目は外角の直球を見逃して三振。これが頭にあったのか。どうも配球を探っているようで、バットを怖々と振ってる。
このところの佐藤輝は球速に遅れまいとするあまり、変化球の完全なボール球に手を出すことが多い。
相手バッテリーも直球に遅れるのが分かっているから、どんどん速い球で攻めてくる。これを捉えきれず、ますます苦しくなる悪循環で頭が混乱しているのではないか。
小笠原の出来は非常によかった。阪神打線全体も、あの大きなカーブにやられた感じだったね。結局、四回は佐藤輝以下が3三振。この大きなチャンスを生かせなかったのが響いた。
もうひとつ悔やまれるのが六回の藤浪の唯一の失点。これは実にもったいない点の取られ方だった。
先頭の土田に対してカウント0-2と追い込んだあとの7球目。梅野がミットを構えた真ん中高めに直球を投げたが、これを中前へ弾き返された。
三回、土田を真ん中高めの直球で3球三振に打ち取っていたシーンが梅野の脳裏にあったのか。その後、変化球で打ち取るための“まき餌”だったのか。
いずれにせよ思い切り腕を振って投げた球ではなかったように見えた。極端に言うと、高めのゾーンにボールを置きにいった感じ。
高めへの釣り球は操るのが案外難しい。藤川球児はこの球で空振りを奪っていたが、投げ方を知っているから腕をしっかり振ることができるんですよ。
その後、犠牲バントと自らの暴投。そしてスクイズを決められ失点した。下位打線にチャンスを作られ犠打で決勝点とは、まるで落とし穴にはまったようなやられ方だが、これもよくある話だ。
藤浪に反省点があるとしたらここだけ。あとはこの日のような投球を続けること。そうすれば本物だろう。
なにしろ、かつての藤浪以上の藤浪になっている可能性があるのだからね。次の登板が楽しみだ。