動いて勝負をかけた中日が大勢攻略 高代氏「接戦に勝つためのお手本のよう」
「巨人1-3中日」(9日、東京ドーム)
中日が延長十回、先頭で出塁した岡林の二盗後、送りバントと阿部のセーフティースクイズで勝ち越し点を奪い、粘る巨人を振り切った。デイリースポーツウェブ評論家の高代延博氏は「接戦を勝つためのお手本のような攻撃だった」と語り、ベンチが仕掛ける“勝負手”の必要性を強調した。
九回裏、R・マルティネスが丸にホームランを打たれて追いつかれた時点で、流れは大きく巨人に傾いた。
中日は勝ちパターンの投手をつぎ込んだ末に振り出しに戻されたのだから形勢は不利。当然のように巨人は十回に抑えの大勢を投入してきた。
しかし、中日が繰り出した“勝負手”が、大勢攻略という大きな成果をもたらしたね。
巨人に誤算があるとすれば、先頭の岡林を四球で歩かせたことだろうが、その岡林が三好の2球目に二盗を試み、成功させた。送りバントはこのあとに使った。
無死二塁からのバントは巨人の野選を誘って一、三塁の形でチャンスは拡大。直後に阿部のスクイズで勝ち越し点を奪い、ノーヒットで決勝点を手にすることができたわけだ。
その後、ビシエドの適時打で追加点が入ったが、ベンチが動くことによって、状況を一変させた得点シーンだったね。
この攻撃を見て思い出したのが、2日に甲子園で行われた阪神-巨人戦の延長十二回裏に見せた阪神の攻め。
この時は無死一塁のチャンスに植田が代走起用された。投手はモーションの大きなデラロサだったが、ここで阪神ベンチが取った作戦が送りバント。これが二封されて失敗に終わり、次は一塁走者となった島田が二盗を試みて刺され、2-2のドローに終わった。
植田対デラロサなら走ってから送るのが、1点を取る近道と考えたんだけどね。
状況によっては、そういう仕掛けもあるということ。中日はこの戦法を用いて鮮やかに大勢を攻略し、途中降板に追いやったのだから見事と言うほかない。
巨人にとって痛かったのは、序盤のチャンスを併殺などで生かし切れなかったこと。間接的な敗因を探れば、決していいとは言えない大野から得点できなかったのが響いた。
セ・リーグはヤクルトが抜け出し、DeNAが追いかける形。そのあとを阪神、広島、巨人がひと塊になってAクラス入りを狙っている。
どこがCS進出を確定させるのか。今はそちらの方に関心が集まっているね。順位争いでどのチームも負けられない戦いは続くが、最下位にいる中日が“接戦を勝つためのお手本”を示してくれたような感じだった。
もっとも中日はこういう“仕掛け”を用いる試合をするようになってきた。来季をにらんだ選手起用を目にすることもあり、先を見据えて戦っているように思える。
いずれにしても、この日の中日は相手がくれたチャンスに対し、自ら動いて勝ちに行く野球をした。打線が打つのを待っているだけでは勝利は呼び込めないということだね。