能見引退「もう十分やらせてもらった」 阪神、オリックスでV貢献 関西盛り上げた18年
オリックス・能見篤史投手兼任コーチ(43)が今季限りでの現役引退を決断したことが14日、分かった。近日中に会見が実施され、後日、引退セレモニーも行われる予定。2004年度ドラフト自由枠で阪神に入団後、タテジマを着て16年、そして昨年からはオリックスでプレーし、多くのファンを魅了してきた。来年に関しては未定だが、18年の現役生活にピリオドを打つ。
18年に及んだ現役生活を思った。胸を張れる。これだけ長く、大好きな野球を続けてこられたから。兼任コーチの立場で優勝争いに身を置くさなか、43歳が下した決断。「最初は、4、5年ぐらいでクビになるかなと思っていたので。もう十分にやらせてもらってきたなと」。能見がユニホームに別れを告げる。
今季はここまで4試合に投げ、最後の登板は8月3日の西武戦。与えられた出番の中で全力を尽くしてきた。「元気だし、問題ない」と体の不安はない。ただ、そこに以前までのように、気持ちが伴ってこない部分を感じていた。また、「若くていい選手が多い」とも話すように、安心して後を託せる後輩たちの存在も、未練なくピリオドを打てる要因となった。
長く続いたプロ野球人生。2004年度のドラフト自由枠で阪神に入団し、1年目は4勝を記録してリーグ優勝を経験したが、順風満帆な日々が続いたわけではない。2年目以降は思うように結果が出ず、4年目の08年は1軍未勝利に終わった。
ちょうどその時期、「もう辞めてください。あなたの顔も見たくないです」とつづられたハガキが送られてきたこともあった。傷つき、痛みを知り、だからこそ強くもなれた。5年目に初めて2桁に到達して13勝を記録。そこからはチームの中心として貢献し、13年にはWBC日本代表として日の丸も背負った。
「阪神のエース」と呼ばれることは望んでいなかったが、携えた信念はエースそのものだった。マウンドで無表情を貫いたスタイルも「点を取られて悔しがったり、打たれてヒザを突いたりしたら諦めた感じが出る。そこで終わったわけではないし、野手を信頼していないように映るからやらない」といった思いから。背中で語り、飾らない人柄と合わせて、仲間からの信頼も厚かった。
20年を最後に阪神を退団。昨季からオリックスでプレーし、リーグ優勝に貢献。チームが変わっても、関西を盛り上げた。今後は近日中に引退会見が実施され、後日、引退セレモニーも行われる予定だ。今は兼任コーチの立場だが、来季以降に関しては現時点で未定。シーズンも残りわずかだが、連覇への思いは強い。チームのために最後まで戦い抜く。
◆能見篤史(のうみ・あつし)1979年5月28日生まれ、43歳。兵庫県出身。180センチ、74キロ。左投げ左打ち。投手。鳥取城北から大阪ガスを経て、2004年度ドラフト自由枠で阪神入団。プロ1年目の05年4月3日・ヤクルト戦(大阪ドーム)で初登板初先発。21年からオリックスで投手コーチを兼任。最多奪三振(12年)。13年WBC日本代表。