ヤクルトの強さの秘密 派手な野球と地味な野球の二刀流?高代氏「ディフェンスの力」
「日本シリーズ・第3戦、オリックス1-7ヤクルト」(25日、京セラドーム大阪)
ヤクルトが山田の先制3ランなど理想的な試合運びで快勝し、対戦成績を2勝1分けとした。デイリースポーツウェブ評論家の高代延博氏は、打順変更が生んだ山田の一発を評価すると同時にディフェンス面に注目。「ヤクルトの強さの秘訣はそこにある」と強調した。
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山田を1番に据えたベンチワークが見事に当たったね。五回二死一、二塁から放った左翼への3ランは久しぶりに見る会心の一撃だった。打点よりもチャンスメークという役割になり、リラックスできたのだろう。
1ストライク後の2球目、初球と同じ内角低めの直球だったが、少しだけ中へ入ってきた。初球があまりにも素晴らしかったため“甘い球”に見えたはずだ。
山田はもともと内角をさばくのがうまい打者。特に腕の伸びる低めのゾーンは強い。2打席目の二塁への内野安打が“きっかけ”になったのかな。同じような内角低めの直球に詰まってはいたが、逆に“これでいける”と手応えを感じたのかもしれない。
今シーズンの不振を引きずる山田はこのシリーズでも当たりが出ていなかった。速い球に合わず、変化球を追いかけて空振り。オリックスバッテリーもそのあたりを意識して配球していたが、ついに仕留められたという感じだね。
山田の一発で先制したヤクルトは直前の四回。一死二、三塁のピンチを無失点で切り抜けた。これがその後の流れを作ったとも言える。高橋を好リードした中村も隠れたヒーローと呼べるのではないか。
まずは中川圭太をフルカウントから真ん中高めの直球で三振に打ち取った。続く杉本は2-2から内角高めの直球で三振。2人ともボール球を振らせたものだ。杉本はコースさえ外れていた。これらを見れば、カウントを整える過程で打者を迷わせていたのがよく分かる。配球が絶妙だった。
もうひとつ、見逃すことのできないディフェンス面の好プレーがあった。それはこの四回に迎えたピンチの場面で、センターの塩見が見せた守備だ。
一死一塁から宗が左中間へ痛烈な打球を放ったが、これをフェンス前で押さえ、一塁走者の生還を許さなかった。先制点を許していれば、その後の展開はどうなっていたか。これも隠れた“ファインプレー”だろう。
ヤクルトはこのシリーズで毎試合本塁打を記録し、派手な野球をしているように見える。
だが、実際にはディフェンス面がしっかりしているチームだ。強烈な三塁線の打球を処理してアウトにした村上のプレーも見逃せない。この試合は“守り勝ち”と表現してもいいくらいだ。
派手な野球ができて地味な野球もできる。これがヤクルトの強さの秘訣だろう。
築城には大きな石が必要だが、隙間を埋める小さな石もなければ完成されないと言われる。ヤクルトという城には隙間というものがほとんどないみたいだね。頑丈なはずだ。