元アスリート現役引退後の「強さ」と「弱さ」 セカンドキャリア成功への“黄金のカギ”とは
今年も多くのプロ野球選手がユニホームを脱ぐ。8日にはトライアウトも行われたが、アスリートたちの現役引退後の道とはどんなものなのか。アスリートのセカンドキャリアを支援するスクール「ABU」学長の中田仁之氏に、実情などを聞いた。3回連載の最終回はアスリートの強さ、弱さを踏まえた上で中田氏がアドバイスを送る。
アスリートの強さとは何か。中田氏らの分析によれば、一つ目は非認知能力。学校の学力テストでは計れない忍耐力、継続力、目標達成力、コミュニケーション能力などのことで「抜群に高い人が多い」という。二つ目はPDCA能力。PLAN(計画)、DO(実行)、CHECK(評価)、ACTION(改善)の頭文字を取ったもので、この能力は子供のころからスポーツを通じて、自分で考え、工夫し、実践しながら技術を向上させてきたことで身に付いている人が多い。
逆に弱さについても中田氏は指摘する。「自分は野球しかしてこなかったから、サッカーのことしか分からないから、とスポーツを言い訳にしがちな点です」。だからこそ、これまで自分が出会わなかった人たちと多く接し、知識を吸収することで視野を広げることが求められる。
現役のアスリートに中田氏がアドバイスするとしたら-。
「現役というのは人脈を広げるスーパーカードです。例えば“阪神タイガースの○○です”と言えばいろんな人に会えるはず。そのスーパーカードを使って、野球界以外の人や他競技のアスリートとできるだけ多く会って、人脈を広げていってほしい。そうする中で、人を見る直感力も磨かれていくと思います」
学生アスリートの場合は、卒業を機に引退する人も多い。新卒で就職活動に臨む上でのアドバイスも送る。
「例えば“ラグビーで全国ベスト8です”とアピールするだけでは、なかなか今の企業は認めてくれない。ラグビーを通じて自分が何を得たのか、その経験を入社後にどう生かせるのか。そういうことが説明できるように、日ごろから意識しておくといいと思います」
中田氏は「セカンドキャリア」という言葉が、あまり好きではないという。「セカンドキャリアはもともと人事用語で、会社員の定年後の仕事に使うような言葉ですから。私はアスリートにはネクストキャリアという言葉を使っています。現役を辞めることも、引退ではなく卒業と言うようにしています」。アスリート自身が次なるステージに備えて小さな一歩を踏み出す。この勇気こそが、ネクストキャリア成功への扉を開ける“黄金のカギ”となる。(デイリースポーツ・岩田卓士)