現役ドラフトの是非「今のチームを出たいという声を全部拾えたのか」プロ野球OBが初の試みを斬る
出場機会に恵まれない選手の移籍を活性化させることで、新たな活躍の場を与えようと初めて導入された「現役ドラフト」が9日、非公開のオンラインで開催され、12球団各1人ずつの12選手が新たなチームに移籍することになった。
各球団の指名選手は次の通り
オリックス 渡辺大樹外野手(ヤクルト)
ソフトバンク 古川侑利投手(日本ハム)
西武 陽川尚将内野手(阪神)
楽天 正随優弥外野手(広島)
ロッテ 大下誠一郎内野手(オリックス)
日本ハム 松岡洸希投手(西武)
ヤクルト 成田翔投手(ロッテ)
DeNA 笠原祥太郎投手(中日)
阪神 大竹耕太郎投手(ソフトバンク)
巨人 オコエ瑠偉外野手(楽天)
広島 戸根千明投手(巨人)
中日 細川成也外野手(DeNA)
開催前からプロ野球ファンの間でリストアップが予想されていた選手、逆にそうでない選手もいるだろう。ただ、現役ドラフト導入の大義名分通り、来季に新たな活躍の場が与えられ、それぞれのチームで貴重な戦力になることを願ってやまない。
プロ野球史上初の試みが終わり、移籍選手と移籍先を確認した阪神OBの中田良弘氏(63)は、「俺らの時代には考えられないことだったけど、今のチームでは試合に出られないという事情のある選手もいるだろうしね。現役ドラフト導入が野球界の活性化につながるのであれば、来年以降も続けていけばいいと思う」との見解を示した。
一方で、中田氏が懸念の色を見せた部分もある。「気になるのは、今のチームでは出場機会に恵まれないから、今のチームを出て、他球団で勝負してみたいという選手の声を全部拾ってくれたかということだね」との声を寄せた。
現役ドラフトの対象でありながら、非公開とされている球団のリストに名前を挙げてもらえなかった選手がいるのではないか。球団がリストで提出した選手はあくまで球団サイドが移籍可と判断した選手であって、選手の意思が反映されていないのではないかという意見だ。
NPB事務局に提出したリストに関しては、球団側が第三者に決して漏らさないという秘密保持の義務を負うとあって、公にされることはない。リストがベールに包まれることは結構だが、新制度に乗っかって再スタートを切りたいと思っていた選手の思いまで隠されていたとしたら、本末転倒と言わざるを得ない。
楽天・石井監督は「難しい部分はあったかと思います。これから完成度が高くなっていけばいいのかなと、参加して思いました」と話し、オリックス・福良GMは「移籍した選手の結果が出てみないと分からない」と話すにとどめた。
また、ラジオ番組に出演した阪神・岡田監督は「続いていくんかな?ちょっと分からないですね。1回目だからね。ほかのチームに行って本当に出るチャンスがあればいいけど。行った選手が活躍すればいいけど、疑問を感じますね。見守りたいですね」と率直な感想を明かした。
選手会の求めに応じる形で始まった今回の現役ドラフト。過去に例を見ない開催ということもあり、各球団に手探り感があったはず。広島・鈴木本部長は「スムーズには全部できた。実際の中身がどうこうは、これから来年にかけてその選手が活躍するか、編成がどう思うか、話し合って改善点があるのか。今後、選手会と話し合っていく」と説明した。
早急に結論を出すことは難しい。それでも、議論を重ね、時を経る中で、魅力あるプロ野球に発展していって欲しいというのは、ファン全員の願いだ。(デイリースポーツ・鈴木健一)