高代延博氏が関西六大学野球の大経大監督として新しいスタート 「難しいが、楽しみ」
関西六大学野球リーグ、大阪経済大学の監督に来年1月1日付で就任する高代延博氏が、アマ野球指導者としての決意と抱負を語った。プロ球界で培った豊富な知識と経験を学生野球にどう生かすのか。新たな挑戦が始まる。
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この話をいただいたときは率直に“難しい”と感じました。次に湧き上がってきたのは勝負の世界に身を置く人間特有の“勝ちたい”という気持ちでした。
大経大の野球部には昨年からコーチとしてかかわって来ましたが、やはりプロ野球とは違い大学野球はあくまでも学業が優先です。
授業を受けた後の練習参加なので、必然的に全員がそろう練習は週末ぐらい。新型コロナの影響もあり、練習スケジュールを作るのがこれほど大変だとは思いもしなかった。
授業優先はどこのチームも同じ。私の学生時代(法政大)はプロ入りする選手も多く、「大学に何しに来てるんや」「勉強です」「あほか。野球やろ」というような会話が当たり前(笑い)でしたが、今は違いますね。
大きな違いという点では、その先(プロ野球、社会人)を目指すかどうか。大経大野球部の学生の多くは3年秋のリーグ戦で引退し、就活に備えます。
今年、オリックスに育成選手として指名された才木海翔投手ら、先を目指す選手は残るけれどもごくわずか。最も強いはずの4年生中心というチームを作れないのがつらいところです。
利用駅は阪急電車の上新庄で吹田市にありますが、野球部のグラウンドは茨木市。そのため選手たちはバイクを利用して移動します。特に雨の日などは危険を伴いますが、こういう環境も選手が集まらない理由かもしれませんね。
ほかに室内練習場があれば-とか、いろいろ考えるところはあります。ただこういう環境でやるのがアマチュア。苦労には工夫でもって対応するしかないとも思ってます。
関西六大学の“大横綱”大商大に勝って優勝-というのは至難の業でしょうが、やるからにはそこを目指したい。
しかし、選手たちにはまず「礼儀作法」を求めます。そして「大きな声でハキハキと」しゃべるように話しています。挨拶は立ち止まってからするように。こういうことができていない学生は結構います。
これらは就職活動に限らず、いち社会人として備えておくべき最低限のマナーです。野球の技術を習得する前に意識すべきは人間形成。私がこの世界に入ったときに強く感じたことでもあります。
大学生は学部も違えば授業時間も違う。成人もいれば未成年もいる。その先の目的もさまざま。“野球をやりたい”という気持ちだけが共通していると言えるのかもしれない。
プロは仕事として金を稼ぐのが目的だからハッキリしているし、モチベーションも高く保てる。
異なるこの2つの世界を経験させてもらっていることを非常にありがたく思ってます。さらに68歳になって新たなスタートを切ることができるなど、本当に幸せ者。今は野球ができる喜びを改めて感じているし、やっぱり勝ちたいですね。
野球人生で監督という大任を拝命するのは初めて。前途は多難でも全力を尽くす覚悟です。そして周囲の人に好かれる人間を育てたい。来年度、一般入試で入って来る新入生も楽しみにしています。
さて当コラムは今回が最後となります。2年間、デイリースポーツを通して高代延博の“愚論”にお付き合いくださった野球ファンの皆様、ありがとうございました。この場をお借りして、心より感謝申し上げます。
高代延博(たかしろ・のぶひろ)奈良・智弁学園高から法大、東芝を経て1979年にドラフト1位で日本ハムに入団。同年ダイヤモンドグラブ賞、80年にベストナインに輝くなど、右投げ右打ちの遊撃手として活躍。広島へ移籍した89年に引退し、その後は広島、中日、日本ハム、ロッテ、オリックス、阪神やWBC日本代表のコーチを務めた。1954年、奈良県出身。