金本知憲氏が語る「打者・大谷」の凄さとは 自身も目指した理想形→会得は「36歳の時」

 歴代7位の通算2539安打と、歴代10位の通算476本塁打を誇るデイリースポーツ評論家の金本知憲氏(54)が、WBCでも大活躍したエンゼルス・大谷翔平投手(28)の打撃のすごさについて解説した。同じ右投げ左打ちの大打者が言及したのは、体の使い方が理想的なものであり、自身も現役時代に目指していた形だったというところ。今後については、野球界のためにも、トレーニング法などの発信に期待を寄せた。

 まずは侍ジャパンの優勝、おめでとうございます。その中で、私なりに感じた「打者・大谷」のすごさについて、触れさせてもらいたい。

 やはり、遠くに飛ばせるパワーがあって、それプラス、理にかなった打ち方ができていると思う。どういったことかというと、下半身主導で先に下半身と腰がグッと入ってきて、あとからバットが遅れて出てくるわけだが、そこでバットがすごくしなっている。最後の最後に、ヘッドがバッと出てくるというイメージだ。

 すごいのはその体の使い方で、下半身主導で、上半身と下半身の捻転差の部分。例えば消しゴムの上と下を持ったとして、その下の部分を下半身に見立ててギュッとひねる。そこから上半身に見立てた上の部分を離すと、先にひねられた下の部分についてくるように回転する。

 大谷の場合は体の柔軟性があるため、そこでより上半身がしなって、ムチのように下半身についてくる。その上で、その下半身に付いてくる上半身とバットが、同じ動きではいけない。上半身がついて回っていく時に、左肘が左脇腹辺りにグッと入っていき、グリップが後方に残っているイメージ。だからインパクトの時に、そこから一気にヘッドが走る形となり、力も強く伝わるし、ヘッドでボールを運ぶような打ち方ができる。そこにも捻転差ができるので、捻転差が二つある打ち方、と言える。

 これは私自身もすごく目指していた打撃の形で、それに気付き、できたのが36歳の時だった。例えば、WBCの決勝で村上が本塁打を放った時も、こういう形で打てていた。

 この打ち方が今の主流なのかというと、そういうことではなく、理想的な体の使い方であり、打てる選手というのは、それができている、といった言い方が近いのではないか。

 昔でいうと落合博満さんの全盛期のような、いかに後ろに残して残して、といった形であり、技術も体の使い方も大きく変わったわけではない。もちろん、大谷がそういった落合さんの打撃などを意識してきたのかは分からないが、少なくとも体の使い方や捻転差といったところでいうと、大谷の打ち方が革新的に新しいもの、ということではないと思う。

 私は自分で発掘したタイプで、大谷はおそらく、最初からそういう打ち方ができていたタイプ。高校時代にセンバツで藤浪から本塁打を打った映像を見ても、その時は金属バットだったが、木製バットでも十分に飛ばせるようなきれいな打ち方をしていた。そこに、年を重ねるごとにパワーが付いてきて、ヘッドスピードも上がってきて、というイメージだろうか。

 ただ、誰もが同じトレーニングをすれば大谷になれるかというと、そういうわけではなく、まず技術がいる。先に述べた体の使い方だけでなく、ボールを芯でアジャストする技術が必要だ。いくらいい打ち方をしても、芯に当たらないと飛ばない。大谷はある程度芯でとらえることができる技術と、遠くに飛ばせる技術の両方を備えている。その上でのパワーだ。

 大谷のパワーの部分だが、体を見ても分かるように、トレーニングもすごくしているようだし、肩周りもすごい。投手として球速もあがっていて、ケガもしない。こういった見事な成功例があるにもかかわらず、いまだにウエートなどのトレーニングを否定する人がいるのは疑問だが…。

 今のところ、ある程度完成されていて、弱点らしい弱点は見当たらない。その中で一つ、今後の大谷に期待したいことがある。二刀流ができて、本当に宇宙から来たような選手だからこそ、もっとトレーニングのことを自分から発信してもらいたい。

 例えばトレーニングをこれぐらいやった、体重が増えて、体脂肪がこれぐらい増えて、そこが気になるだとか。このトレーニングで、打球の初速が上がっただとか、そういったことを、子どもたちや野球界のためにも、より発信していってもらえればと思う。

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