沖縄尚学・東恩納 トランペットとマッサージ、父の支えに「感謝しています」 4強ならずも悔いなし
「全国高校野球選手権・準々決勝、慶応7-2沖縄尚学」(19日、甲子園球場)
“ミスターゼロ”がマウンドを譲った。沖縄尚学の東恩納蒼投手(3年)は「相手が上だった。悔いはないです」とすっきりとした表情で言葉を紡いだ。
2-0の六回に突如乱れた。普段はポーカーフェースの右腕が、1死満塁で走者一掃の逆転二塁打を浴びると、珍しく笑顔を見せた。「甘い球を捉えてきてさすがだな」。さらに5点目を奪われ、1死二塁で降板。「抑えたいという気持ちが出て、球が浮いてしまった」。聖地の怖さを初めて知った。
力投を見せる息子に、父・直樹さん(56)は一球ごとに声を出し、見守った。小学5年時から現在まで練習後にマッサージを1~2時間、ほぼ毎日行ってきたという。「少しでも疲れが取れたら」と息子を支えてきた。
小学校の音楽教諭でもある直樹さんはトランペットの演奏でも後押し。家では無口だという息子はマッサージにも「ありがとう」と言ったことはない。それでも、最後の夏。アルプスから聞こえた父の演奏に、東恩納は「感謝しています」と素直な思いを口にした。
今夏は沖縄大会初戦から甲子園3回戦・創成館戦の八回途中まで47回1/3連続無失点を記録し注目を浴びた。今後は大学へ進学し、4年後に夢のプロ入りを目指す。「この経験を生かして次の舞台で成長したい」。次のステージへ向け、歩みを止めることはない。
◆東恩納 蒼(ひがしおんな・あおい)2005年7月24日生まれ、18歳。沖縄県出身。172センチ、70キロ。右投げ右打ち、投手。小2から軟式の仲井真ライオンズで野球を始め、仲井真中時代は硬式の那覇ボーイズに所属。沖縄尚学では1年秋から背番号「12」でメンバー入り。最速147キロ。