慶応107年ぶり頂点 夏決勝史上初の丸田先頭打者弾 陸の王者こじ開けた高校野球新時代の扉

 優勝し、歓喜する慶応ナイン(撮影・北村雅宏)
 1回、先制ソロを放つ慶応・丸田
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 「全国高校野球選手権・決勝、慶応8-2仙台育英」(23日、甲子園球場)

 決勝が行われ、慶応が1916年の第2回大会以来、107年ぶり2度目の優勝を果たした。1番・丸田湊斗外野手(3年)が、夏の決勝では史上初となる先頭打者本塁打を放つなど、今春センバツ大会2回戦で敗れた仙台育英を計13安打8得点と圧倒。チームとして掲げてきた「エンジョイベースボール」を最後まで全うし、夏の甲子園史上最大ブランクで王座奪還を果たした。

 曇天の下、マウンドで人さし指を掲げた慶応ナインの笑顔が光る。ヒーロー・丸田は「世界中のどこの高校生を探しても、高校生だけじゃなくてどんな人を探しても最高の夏になった」とうれし涙が頬を伝った。107年ぶりの頂点は、これからの高校野球を変える大きな勝利だ。

 新時代の幕開けの合図は、1番・丸田の快音だった。内野席まで埋め尽くした大応援団がオリジナル応援曲「若き血」を熱唱し、背中を押す。「打った瞬間入ったなと。届いてくれーって」。高く上がった白球に思いが伝わり、風に乗って右翼スタンドに到達した。夏の決勝では史上初の先頭打者弾。自身公式戦初本塁打を最高の舞台で放ち、「すごい価値のあるホームランを打つためだけにためたのかな」とはにかんだ。

 切り込み隊長の一発でチームは流れに乗る。3-2の五回には2番手・高橋を攻め立てて、打者9人の猛攻で一挙5得点のビッグイニング。一気に突き放した。

 整った外見で爽やかにプレーする姿から“慶応のプリンス”の異名を取る。慶応には「野球だけやって勉強はやらないという所には行きたくない」と進学。勉強と両立しながら「慶応日本一」と「エンジョイベースボール」を掲げ、必死に白球を追ってきた。

 髪形の自由、考える自由、発言する自由。練習メニューにはほぼ毎日自主練習が組み込まれ、考える機会を与えられる。投手陣では登板予定を監督に意見することもある。監督の指示にただ従うだけではなく、自分で考え、意見し、行動に移すのが慶応野球。「野球を最後の最後まで楽しみ尽くす。野球の価値を自分たちが示せたかなと。厳しい声もあったけど自分たちの野球で日本一を取れたのでずっと続けて掲げてきてよかった」と、結果で認めさせた。

 幾度となく主将・大村昊澄内野手(3年)が口にしてきた「日本一に常識を変える」という言葉。この歴史的勝利で、多少なりとも見ていた人の心が動いたことは間違いない。

 「自分たちが新しい時代を作ると強く決意して始まったチーム。心の底から野球は楽しいんだぞと、そういう原動力から出たプレーや行動が最後は一番強いというのを一番証明したかった。そこは変えられた常識の一つなんじゃないかな」と主将。慶応野球部の歴史的一歩は、高校野球の新たな一歩となる。

 ◆丸田湊斗(まるた・みなと)2005年4月25日生まれ。18歳。神奈川県出身。176センチ73キロ。右投げ左打ち。外野手。小3から南舞岡スカイラークスで野球を始めた。横浜市立日隈山中時代は横浜泉中央ボーイズでプレー。当時は内野手として全国大会にも出場。高校入学後は2年春からベンチ入り。2年秋からレギュラーになった。50メートル走5秒9。遠投100メートル。好きなプロ野球選手は元阪神の鳥谷敬氏。

 ◆最大ブランクV 慶応は1916年の第2回大会以来、107年ぶりの優勝。これまでの最大ブランク優勝は2016年に1962年以来、54年ぶりに優勝した作新学院だった。

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