慶応・森林監督 悲願Vに男泣き「素晴らしい成長ぶり」 28歳で脱サラして指導者に転身
「全国高校野球選手権・決勝、慶応8-2仙台育英」(23日、甲子園球場)
決勝が行われ、慶応が1916年の第2回大会以来、107年ぶり2度目の優勝を果たした。チームとして掲げてきた「エンジョイベースボール」を最後まで全うし、夏の甲子園史上最大ブランクで王座奪還を果たした。ずっと目指し続けた景色に、森林貴彦監督(50)は感慨深げだった。塾歌を聴きながら涙。「まだ冷静になれない。選手たちの頑張りが本当にすごくて素晴らしい成長ぶりでした」とたたえた。
長い道のりだった。同校野球部OBで、慶大では慶応高の学生コーチを務めた。大学卒業後はNTTに就職したが、「学生コーチの4年間がどうしても忘れがたかった」と28歳で脱サラ。筑波大、同大学院に計3年通い、教員免許を取得した。コーチ、助監督を経て15年に監督に就任。現在は慶応幼稚舎で3年生の担任を持ち、二足のわらじで野球部を指導している。
今の野球観は、まさに学生コーチ時代に培ったものだ。当時内野担当コーチを務めており、上田誠前監督から練習メニューを一任された。自分で考える楽しさを自ら経験したことが、今の信念を作っている。
監督就任後は「いろんな人の力を借りるようにした」と、慶大野球部や社会人チームへの練習参加などさまざまな試みを続けてきた。慶応野球部の真価を示す勝利に、「チームの信念を貫いてきて、何か皆さまに感じていただけるものがあればうれしいです」と森林監督。ここからまた高校野球に新しい風を吹かせる。
◆森林貴彦(もりばやし・たかひこ)1973年6月7日生まれ。50歳。東京都出身。慶応高時代は遊撃手としてプレー。慶応大進学後は母校で学生コーチを務めた。卒業後にNTTに就職したが指導者を目指し、筑波大大学院に進学。茨城県のつくば秀英でコーチも務めた。2002年から慶応幼稚舎の教諭となり、慶応高のコーチに就任。助監督を経て、15年秋から監督に就任した。