青学大準V 阪神ドラ1下村海翔 涙の誓い 自らの押し出し四球「この経験も絶対次に生かしてプロで活躍」
「明治神宮大会・大学の部・決勝、慶大2-0青学大」(20日、神宮球場)
明治神宮野球大会・大学の部の決勝が20日、神宮球場で行われ、青学大は慶大に惜敗し、優勝を逃した。阪神からドラフト1位指名を受けた下村海翔投手(21)は2番手で登板するも味方の失策からピンチを招くと、9球連続でストライクが入らず押し出し四球で先制点を献上。2回1/3を無安打2四球2失点(自責0)で降板した。試合後には涙も見せた右腕は、この悔しさを糧にプロの世界で羽ばたくことを誓った。
いつものポーカーフェースがゆがんだ。無念のゲームセット-。下村の大学での4年間が終わった。「自分のせいで負けた」。チームメートに肩を抱き寄せられ、涙を流した。
「『絶対に抑えるんだ』とマウンドに上がったんですけど、ピンチを背負ってからの投球で、その思いが強すぎて空回りして、精神的な弱さが出た。この試合が4年間で一番悔しかった」
誰もが想像しない大学最終登板だった。18日の今大会初戦・富士大戦で先発した下村は中1日、2番手で六回から登板すると三者凡退に斬る抜群の立ち上がり。武器のカットボールがさえ、七回も3人で料理する圧巻の投球を見せた。
だが、悪夢は八回だ。味方の連続失策で1死一、二塁のピンチを背負うと四球を与え、満塁。続く打者には1球もストライクが入らず、押し出し四球で先制点を献上した。なおも1死満塁で迎えた広瀬(ソフトバンクドラフト3位)への初球も低めに外れるボール。安藤監督は慌てて常広(広島同1位)への交代を告げた。下村は悔しさをにじませながらも「勝つためには自分が降りるのが最善だと思った」と降板。慶大の大声援にも圧倒され、「いつも通り」ができず、ベンチでうなだれるしかなかった。
まさかの9球連続ボールで2回1/3無安打2四球2失点(自責0)。「シンプルに力不足。今までもピンチは何百回、何千回って経験してきてるんですけど、こんなにストライクを1つ取るのが難しいって感じたこともなかった」。ひたすら自分を責め、涙ぐみながら言葉を紡いだ。
春秋のリーグ戦、全日本大学選手権を制覇。何よりも、ともに大学4冠を目指して戦ってきた仲間への思いがあふれた。
「チームのみんなに申し訳ない。最後の最後で弱い部分を見せてしまって…ここでチームを助けられなかったのは一生忘れることはないと思います」
この思いは絶対に無駄にはしない。次のステージへ、下村は必死に前を向いた。「この経験も絶対次に生かして、もっともっと成長してプロの舞台では活躍できるように頑張ります」。あの悔しさがあったから今がある。数年後、そう笑えるように-。
◇下村 海翔(しもむら・かいと)2002年3月27日生まれ、21歳。兵庫県出身。174センチ、73キロ。右投げ右打ち。投手。小学3年時に甲武ライオンズで野球を始め、甲武中では宝塚ボーイズに所属。九州国際大付では1年秋からベンチ入り。青学大では1年秋から登板。23年の日米大学野球でMVP。今年度ドラフトで阪神から1位指名を受ける。好きな有名人はYouTuberのサワヤン。
◆阪神・吉野スカウト(スタンドから観戦し)「前回(18日の初戦)よりは良くなっていた。今回悔しい思いもしながら、それをまた糧に頑張ってくれるんじゃないかな。ドラフトが終わった後で評価自体は変わらないので、来年の活躍に期待している」