なぜ?アップ傾向が続くプロ野球契約更改 チーム成績が低迷しても増額サイン続出 評論家「査定方法の変化」指摘
プロ野球の契約更改も大詰めを迎えてきた。今年の特徴として言えるのが“暖冬”傾向。大幅アップが続いている日本一の阪神、リーグ3連覇のオリックス以外でも増額が続いている。
今季はコロナ禍が開け、開幕から制限無しの集客ができた。最下位に低迷した中日でも観客動員が200万人を突破。3月のWBCで世界一を奪還した影響もあり、開幕カードの計18試合では約61万人を動員した。昨年の開幕カード計18試合が約49万人だったことを考えても、各球団の収益は前年比で大幅にアップしたと考えられる。
それを選手に還元したという球団サイドの考え方の一方、阪神、広島、オリックスでコーチを歴任したデイリースポーツ評論家・岡義朗氏は「査定方法の変化を感じるよね。今は選手が頑張ったら、そこまで全体の上限を考えることなく上げている。以前は総額の中での話だったから」と指摘する。
以前は球団内で予算を決めた上で、どの割合で選手に分配していくかだったという。「例えば予算があらかじめ決めてあって、10億円あるとするならどう選手に分配していくか。つまり選手同士で奪い合う形になっていた。でも今はきっちりと査定ポイントというのがあって、それに応じて昇給額が決められ、全体の予算となっていく。だからチームが低迷したとしても、個人では頑張っているわけだから、給料は上がっていく形になるよね」と分析した。
加えて「査定ポイントも選手が理解しやすくなっていると思う。例えばアウト一つにしても、それがヒットエンドランのサインで走者を進めてアウトになったのかどうかとか。そこはヘッドコーチなり、作戦コーチが査定担当と話をしていると思う。当然、勝利につながる1打点と、負けている時の1打点では違うしね」と岡氏。「昔はチームが勝たないと給料が上がりづらかった。でも今は選手の査定がしっかりした上で、チームの成績が上がれば“ボーナス”という形で評価されていることが考えられるよね」という。
「またケガしたとしても公傷扱いというか、未然に故障を防ぐために休ませたことが査定担当に伝わっているとか。昔と比べたら選手はありがたいんじゃないか。また期待料として若い選手をしっかりと評価することで、その選手が伸びてくれば、新たなファンを引き込んでくれるかもしれない」。実際にオリックスではリーグ3連覇の前年、チーム成績が低迷しながらも、しっかりと結果を残した若手選手の年俸をアップさせた。それがモチベーションにつながり、翌年から飛躍。若手選手がどんどん出てくる土壌へと生まれ変わり、チームが勝ち、観客動員もアップする。さらにはグッズ収入など付帯的な部分でも増収が見込めるなど好循環となった。
「本当に昔はある投手が前年22勝、当年20勝で年俸が落ちたこともあったから。プロ野球界はいい形に変わっていってると思う」と述懐した岡氏。暖冬傾向にはさまざまな要因が絡んでいる。