「俺は答えない」名捕手、ここにあり 谷繁元信氏の人一倍強かった職業意識 野球殿堂入り

 権藤博氏(右)に野球殿堂入りを祝福される谷繁元信氏(代表撮影)
 中日時代の谷繁氏=2015年7月
 日本シリーズの西武戦で本塁打を放つ横浜の谷繁氏=1998年10月
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 野球殿堂博物館は18日、殿堂入りのメンバーを発表し、競技者表彰は横浜(現DeNA)と中日でプレーした谷繁元信さん(53)、元広島の黒田博樹さん(48)が選ばれた。現役時代を取材したデイリースポーツの担当記者が、レジェンドとの思い出を明かした。

  ◇  ◇

 捕手という職業意識の強さは人一倍だった。谷繁氏は手の内や心模様を語ることを敬遠する傾向が他の選手より強かった。中日に移籍した2002年から、1歳年上の彼への取材が始まったのだが、言葉尻は丁寧でも、万人ウケするようなコメントしか引き出せなかった記憶しかない。

 「肩、弱くなりましたね」

 この言葉をきっかけに谷繁氏の本音が漏れてくるようになった。

 「お前、どこ見て、それ言ってんの?」

 1日や数日を見て問いかけたわけではない。数年にわたって、グラウンド上での動きを可能な限り追って集めたプレーの癖、練習パターン、質と量の変化などを伝えた。

 「そんなに見てたんだ。そこまで熱心に見られてるとは知らなかった」と言い、十八番の“ガハハ笑い”した。

 その頃を境に、試合前に待ち合わせをするわけでもなくモーニングコーヒーを飲むようになった。

 「記者は聞くのが仕事だけど、俺は答えないのが仕事のひとつ。俺の言葉が勝敗に直結する可能性だってあるんだから」と言った。名捕手、ここにあり。(デイリースポーツ・元中日担当・鈴木健一)

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