日本航空石川センバツ選出 避難先の山梨で吉報「少しでも明るさを」 福森、被災当時は祖母おんぶし高台へ避難「死ぬかと」

 第96回選抜高校野球大会(3月8日抽選、同18日開幕・甲子園)の選考委員会が26日、大阪市内で開かれ、能登半島地震で大きな被害を受けた石川県輪島市にある日本航空石川など32校が選出された。日本航空石川は、現在練習を行う山梨県内で取材に応じ、福森誠也投手(2年)が輪島市での被災当時を思い返すとともに、出場への喜びを口にした。同じく石川県の、昨秋の神宮大会王者・星稜は、石川県勢初優勝を目指す。

 長いまつげがキラキラとぬれていた。「日本航空石川」という名前が聞こえた瞬間、うれしさとともに脳裏によぎったのは、「思い出したくなかった元旦の日」の記憶。福森は、こぼれ落ちる涙を拭いながら甲子園出場の喜びをかみしめた。

 「チーム全員で甲子園という目標に進んでいたので、とてもうれしい気持ちです」

 石川県七尾市出身の福森は、輪島市にある祖母・早瀬舞子さん(66)の家で被災した。「経験したことのないすごい揺れで、みんなパニックになっていた」という中、立てなくなっていた舞子さんをおんぶし、はだしのまま高台まで避難。「野球のことは考えられなかったです。死ぬかと思ったので」と壮絶な体験を振り返る。

 現在チームは、女子マネジャー2人を含む部員67人のうち、主力選手を中心とした32人が、山梨県甲斐市にある兄弟校へ集団避難。19日から富士川町内のグラウンドを借りて、本格練習を再開している。

 福森も悩んだ末に山梨行きを決断。「環境を用意してくださったので、自分は素直にそこで野球がしたい。山梨に来て良かった」と少しずつ前に進み始めている。「まだ避難所にいる方々たちはストレスを抱えていると思う。自分たちが頑張っている姿で何か感じてもらえたら」と決意。昨秋はメンバー入りがかなわなかったが、中村隆監督(39)は「球のキレがあって手元で伸びる。体も強くなって年末は『これは』と思った」とメンバー入りへ期待を寄せる。

 大きな意味も加わった憧れの舞台。涙を流しながら報道陣に取材対応した中村監督も思いを込める。「僕らが何かを与えるというのは、おこがましいですけど、少しでも明るさを届けられるのであれば、それほどうれしいことはない」。“故郷”へ勇気を、そして、受け入れてくれた山梨の街へ恩返しを-。夢の舞台から明るい光を届ける。

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