「ヤクルト２－０広島」（１５日、坊っちゃんスタジアム）

　ゆっくりと駆け出すと、ヤクルト・村上宗隆内野手は控えめに拳を握った。「原点」と呼ぶ松山の風が心地よく吹く。「まだまだ通過点。もっともっと打てるように頑張ります」。１００号、１５０号…。何度も最年少記録を塗り替え、２００号でも打ち立てた新たな金字塔。緑に染まる右中間席へ、感謝と恩返しのメモリアル弾だ。

　同学年のドラフト２位・松本健（トヨタ自動車）の魅せた快投で、次第に熱を帯びていったスタンド。最高潮に達したのは八回だ。村上が２死から打席に向かい、２球目。フォークを完璧に捉えると、「自分の中でヒットも出てませんでしたし、ホームランも出てなかったので」とトンネルを劇弾で抜け出した。

　１年目のオフ。土台を作ったのが松山だった。秋季練習で汗を流し、「きつい練習が一番に頭の中に浮かびます」と笑う。走攻守全てのレベルアップを遂げた場所で、早出特打を連日行い、バットを振り込んだ。師匠・青木から「始動を早くしたらどうか」など、タイミングの取り方の助言を受け、貪欲に結果へとつなげた。

　３５打席ぶりの本塁打に、４試合無安打と沈黙する中で響かせた２００号。これまで清原和博氏の持つ２４歳１０カ月の最年少記録を、今度は２４歳３カ月で更新した。「いい時ばかりじゃない。シーズンが終わった時に、しっかり野球と向き合えたなと思えるシーズンになると思う。それは去年より自分自身、成長を感じてる部分でもあるので」。松山の地でつないだ夢は、まだ始まりに過ぎない。

　◆通算２００本塁打　ヤクルト・村上内野手が、１５日の広島⑥戦（松山）の八回に矢崎から今季９号のソロを放って達成。プロ野球１１５人目。初本塁打は１８年９月１６日の広島戦で岡田から。