「阪神０－１中日」（２５日、倉敷マスカットスタジアム）

　均衡を破る一打が右前へと転がっていった。八回２死三塁。打席にはプロ初の３番に座った中日・板山祐太郎外野手。カウント１－１からの３球目。才木が投じた１３９キロスライダーを振り抜いた。古巣・阪神相手に痛快な恩返しとなる値千金の先制適時打で試合を決めた。

　「鬼気迫る投球をしていた慎之介（小笠原）があの回で代わって、何とか点を取りたい中で幹也（田中）が三塁打で出てくれた。何とかかえすつもりだった。タイガース相手にビジターで戦うのは初めて。本当に忘れられない一日になりました」

　大当たりの一日だった。まずは四回１死で中前へはじき返すと、六回１死は中前打で出塁し、４年ぶりの盗塁も決めた。そして迎えたこの日一番の見せどころできっちり仕事を果たしてみせた。

　縦じまのユニホームが火を付けてくれる。試合前は「楽しみ」と語っていた阪神戦。プレーボールが掛かれば集中力は一段と増す。今季は２試合で計７打数５安打、打率・７１４のハイアベレージを残す。昨オフに戦力外通告を受け、竜と育成契約を結んだ直後、「これまでの人生で野球ができる喜びを一番感じています」と話した男は再出発を期したシーズンで、古巣相手にスポットライトを浴びた。

　２６日からはかつての本拠地・甲子園で戦う。虎党が陣取る前で「あしたも勝ちます」と大声で宣言した板山。どん底からはい上がった苦労人はチームに必要なピースになりつつある。

　◆阪神、元虎戦士に…　昨年まで阪神に在籍した板山の今季阪神戦はこの日で７打数５安打１打点、打率．７１４の活躍を見せられている。さらに山本にも４月１３日に４打数３安打１打点の活躍を許して敗戦。山本の今季阪神戦通算成績は打率・３割（２０打数６安打）、３打点の好成績となっている。