中学準硬式野球、75年の歴史に幕 岡田、牛島、香川、桑田、西山ら名選手輩出 209→36校減少一途、運営携わった竹内氏「寂しい」

 大阪中学校体育連盟第7代準硬式野球部長の爲澤さん(左)と第8代部長の竹内さん
 準硬式ボール
 「TOP BALL」の1ダースケース
3枚

 日本では準硬式球を使用した中学生の野球大会が大阪にだけ存在する。1950年から続く大阪中学校優勝野球大会。立派な野球場の使用は“中学球児”の心を躍らせたが、時代の変化は容赦がない。多くの名選手を輩出した歴史ある大会も、75回目を迎える今夏を最後に幕を閉じる。

 軟球でもない、硬球でもない。その中間に位置するボールがある。それが準硬式球。表面はゴムだが、芯が硬くて打球音がいい。少年たちを夢中にさせる“魔法の球”トップボールだ。

 かつて大阪中学校体育連盟準硬式野球部の第8代部長として組織運営に携わった竹内正己さん(70)がしみじみと語る。

 「戦後、大阪に中学生の野球大会はなかったんですが、準硬式を中学校体育連盟が認めて、スタートしたということに誇りを持っています」

 1950年の第1回大会には、のちに大洋ホエールズで活躍した近藤和彦が参加している。現阪神タイガース監督の岡田彰布も第23回大会に明星中の主軸として中央大会に出場。“超中学生級”の打撃はその後に続く中学生の憧れとなった。

 牛島-香川のバッテリーで高校野球ファンを熱狂させた2人も準硬式出身。牛島和彦は四条中のエースとして完全試合を記録し、香川伸行は大体大付中の主将として大会連覇に貢献した。香川は牛島とバッテリーを組めば甲子園出場が叶うと確信し、自身と同じ浪商への進学を勧めたという。

 審判委員長の経験もある竹内さんは主審の立場で2度、桑田真澄(大正中)が出場した試合を裁いている。

 「彼はストレートもカーブも凄かった。フィールディングもよくて点が取れない。唯一の得点方法がホームスチールと言われるぐらいでした」

 無死一塁の走者を2度の送りバントで三塁へ進め、いちかばちかの本盗。2死三塁ではモーションが大きくなり、数少ないスキが生じるからだった。

 その奇襲作戦が実際に目の前で起きたが、間一髪アウト。竹内さんは「あれが直球でなくカーブだったら分からなかった」という。とはいえ14歳ですでに完成の域にあった?桑田。この年は西山秀二(現デイリースポーツ評論家)とのバッテリーで圧倒的な強さを発揮して優勝した。

 残したドラマは数え切れない。プロとは縁のなかった選手たちも懸命に中央大会を目指した。思い起こせば209校で始まった大会も今年は36校。

 生徒急増、校舎増築に伴う校庭の縮小、準硬式球がもたらす危険度の問題から、大阪市内が軟式野球へ移行(私学は任意)したのが1961年。その後、環境は激変し、少子化による部員数減、指導者数減、スポーツの多様化と民間クラブの充実などで加盟校は減少していった。

 第7代部長を務めた爲澤(ためざわ)保さんは「中学で部活動をする生徒は高校で伸びると言われてます。球場での後始末もきっちりしていて評判がよかったんですが」と話す。

 「紅白歌合戦と同じ回数の大会。寂しいですね」と竹内さん。秋からは軟式の大会に合流する。野球に優劣はないが、準硬式存続へ向けて力を尽くしてきた2人だけに無念の思いは強い。

 ◆準硬式球(通称トップボール) コルクの粉末と樹脂で生成された芯に糸を巻き付け、表面をゴムで覆ったボールのこと。中空の軟式球とは違い、中心部に硬式球と同様の充填(じゅうてん)物が存在するため硬くてはじきがいい。また牛革2片を縫い合わせて作る硬式球とは異なり、表面部分はゴムのため若干軟らかい。全日本大学準硬式野球連盟でも使用している。

 ◆中学準硬式野球を経験した主なプロ野球選手 近藤和彦(大洋など)、坂崎一彦(巨人など)、土井正博(近鉄など)、高田繁(巨人)、岡田彰布(阪神など)、牛島和彦(中日など)、香川伸行(南海・ダイエー)、桑田真澄(巨人など)、西山秀二(広島など)、古久保健二(近鉄)、南渕時高(ロッテなど)。ほかに大熊忠義(阪急)、住友平(阪急)らがいる。

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