阪神・糸原健斗の母校、7年ぶり悲願のキーマン
第106回全国高校野球選手権・島根大会の4強が出揃った。注目は、阪神・糸原健斗内野手の母校で7年ぶりに夏の甲子園を目指す開星だ。
「そろそろ勝ってください。甲子園で活躍する後輩たちの姿を見たい」
糸原から母校に激励が届けられた開星はノーシードからここまで4試合を勝ち抜き、2年ぶりのベスト4進出を果たした。立役者は昨秋からエースナンバーを背負う右腕・井上勇翔(3年)。準々決勝の矢上戦でも9回7安打1失点で完投勝利を飾った。最速は141キロ。カーブ、スライダー、チェンジアップ、カットボールなど、縦、横、多彩な変化球を織り交ぜながら要所を締め、昨秋の準優勝、今春4強の矢上打線を最少失点に抑えた。
昨年の開星は個々の能力が高くV候補最右翼に挙げられたが、ベスト8止まり。新チームは際立った存在が居なかったものの「チーム力」が高く、全国屈指の強豪校との練習試合でも白星を重ねてきた。
1年時にほとんど登板機会のなかった井上勇の成長がチームの屋台骨を支えている。広島出身の井上勇は名門軟式クラブ「府中オーシャンズ」でエースとして全国大会を経験。星稜中学(石川)に敗れ「全国の強豪に勝ち切る難しさ」を痛感した。
甲子園を目指して進学した開星では、これまで2年半の寮生活でメンタル面が鍛えられた。普段温厚な性分ながらマウンドでは一変。生来の負けん気で、ときにマウンドで自制心を見失うこともあったが、知人を介してプロ野球のスカウトから「投手で一番大切にするべきところ」を指南されウイークを克服した。
昨年は8月の関西遠征で大阪、京都の強豪と連戦。井上勇が先発した試合は全勝した。阪神・岡田彰布監督の母校関大北陽戦でも8回2失点と好投し、接戦を制した。
年が明け成長が加速すると、今年4月の創志学園戦で7回1失点の好投。これを見た同校の門馬敬治監督から「君のあの変化球は初見では打てない。自信を持って投げればいい」と称賛されるなど、技術面でも進化を遂げた。
夏大会前最後の強化試合となった四国遠征では松山商戦で7回1失点で勝利を挙げ、昨夏の香川代表・英明との一戦では9回3失点完投(引き分け)。総仕上げを済ませ本番に臨んだ。
「甲子園のマウンドで投げたい」
NPBのスカウトも注目する投手となった井上勇が見据える高台の景色まであと2つ。創立100周年を迎えた開星の甲子園カムバックは、野球部、関係者、そして糸原の悲願でもある。