健大高崎・箱山 春夏連覇夢散 甲子園の土持ち帰らず「プロになって戻ってきたい」
「全国高校野球選手権・2回戦、智弁学園2-1健大高崎」(14日、甲子園球場)
あまりにも短い最後の夏。健大高崎(群馬)の箱山遥人捕手(3年)は叫びにも近い声で思いを語った。
「もう…2度と、高校野球ができないと思うと、すごく悲しいです」
期待された春夏連覇。ドラフト候補と注目され、重圧ものしかかった。木製バットを試した中で結果が出ない。グラウンドに出ると腹痛が襲う日々も続いた。「このままじゃダメになる」-。生方啓介部長(43)に苦しい思いを吐露した。
生方部長は「おまえ一人がチームを背負ってるわけじゃないし、『まずは自分』で、周りに甘えて良いんだと話しました」と明かす。箱山以外の部員を集め状況も説明。「(副将の)金井がミーティングの中心になったり、気付いた事を選手間で話すようになったりしました」。ナインの行動も変化。箱山が復調し始めた夏の始まり、再びチームは一つになった。
首脳陣は必ず箱山の意見も聞いた上で判断を下す。2年生投手が奮闘する中、2日前には箱山から「春夏連覇のために3年生が先発で行くべき」と進言があった。この試合では、盗塁や犠打を阻止するなど強肩で魅了。その存在は、大きい。
ただ「強くない。普通の高校生」と生方部長。「森山にずっとちょっかいかけたり、金井をいじったりしています」と笑う。箱山は、甲子園の土を持ち帰らなかった。「思い出作りに来た場所じゃない。プロになって戻ってきたい」。弱くて、強い。世代屈指の捕手が次なるステージを目指す。
◆箱山 遥人(はこやま・はると)2006年4月26日、18歳。東京都足立区出身。176センチ、80キロ。右投げ右打ち。5歳から野球を始め、本木小では「ジュニアヤンガース」に所属し当時から捕手。区立第九中では「江戸川中央シニア」で全国大会4強。健大高崎では1年秋から正捕手としてベンチ入りし、昨春と今春のセンバツ出場。50メートル走は6秒5、遠投は100メートル。二塁送球は1・8秒。高校通算35本塁打。