丸だ!菊池だ!満弾2発で最下位脱出
「広島11‐6中日」(12日、マツダ)
1日で最下位脱出だ。広島が丸佳浩外野手(24)、菊池涼介内野手(23)によるプロ野球タイ記録の「満塁本塁打2発」で今季初の2桁得点をマークし、連敗を2で止めた。広島の1試合2満塁弾は球団史上3度目。交流戦前、最後の試合を白星で飾った野村鯉が上昇気流に乗り、14日からパの猛者に挑む。
こんな勝利を待っていた。好機で飛び出した、プロ野球タイ記録となる1試合2本の満塁弾。勝利をたぐり寄せる放物線に、真っ赤に染まった右翼席はお祭り騒ぎだ。前日は拙攻に泣いた野村鯉。この日はそのうっぷんを晴らす猛打で最下位から抜け出した。
まずは丸が魅せた。1‐3の四回2死満塁、代打で登場すると、朝倉の高めに浮いた139キロシュートを振り抜いた。「詰まらないようにポイントを前にして打った」という打球は、グングン伸びて右中間席に飛び込んだ。自身初、広島では05年5月21日の楽天戦(広島)で新井(現阪神)が放って以来8年ぶりの代打満塁本塁打で試合をひっくり返した。
この試合はベンチスタートだった。前日の六回、岩本の適時二塁打で本塁へ滑り込んだ際に左ふくらはぎを強打し、打撲と診断された。一夜明けても痛みが引かず、全力疾走すると肉離れを引き起こす可能性があるため、自ら先発落ちを申し出た。ダイヤモンドをゆっくりと一周できる柵越えに「良かった」と目尻を下げた。
菊池も続く。追い付かれた直後の六回だ。中東の適時打で1点を勝ち越し、なお1死満塁。三瀬の136キロカットボールを左中間席最前列へ運んだ。「丸に『行くとは思わなかった』と言われた。本当に良かった」。リードを5点に広げる貴重な中押し弾。これで事実上、勝利が決まった。
守備の悔しさをバットに込めた。五回無死、大島の打球を一塁へ悪送球。六回にも送球エラーを犯した。いずれも失点に結びついただけに「ミスを取り返したかった」。汚名返上の一撃に、安堵の表情を浮かべた。
この日は母の日。試合前にはスラィリーがカーネーションを砂かぶり席のファンにプレゼントした。満塁弾コンビは「これが最高のプレゼントですね」と声をそろえた。
七回には堂林が中越えソロ。今季1試合最多の3発に野村監督は「満塁本塁打2本は期待していない」と苦笑いしながら、「できたことを自信にしてほしい」と称えた。14日からは交流戦に突入する。過去8年で勝ち越しは2度とチームにとっては鬼門だ。「この勝利を交流戦につなげたい」と意気込んだ菊池。勢いに乗り、借金返済と上位進出を狙う。