ニックただいま初H!初スタメン即快音
「交流戦、ロッテ7-0広島」(19日、QVC)
左膝の大ケガから復帰した広島のニック・スタビノア外野手(31)が「3番・DH」で今季初スタメン出場した。六回の3打席目には、343日ぶりとなる安打もマーク。チームは今季3度目の完封負けを喫し、2連敗となったが、頼れる助っ人の復活でこれから巻き返す。
全く見どころのない、最悪の完封負け。試合後は、千葉に集まった多くの鯉党から罵声(ばせい)が飛び交うかと思われたが、逆だった。「ニック、お帰り~」。球場を出て、宿舎へ帰るバスに向かう助っ人に、あちこちから温かい声援が送られた。
3番・DH それほど、この日を待ちわびたファンは多かった。昨年6月11日のオリックス戦(三次)での走塁中に、左膝前十字靱帯(じんたい)損傷と内側半月板損傷の重傷。その悲劇を鯉党の誰もが知っていた。だからこそ試合開始前、「3番・DH」でのスタメンが場内で発表された際、大きな歓声が沸いた。
第1打席は先制のチャンスで回ってきた。1死三塁。しかし結果は一塁へのファウルフライ。「最初の2打席はなかなかタイミングが合わなかった」。前日のオリックス戦に代打で今季初出場したが、さすがに1打席では1軍の投手との間合いをつかめていなかった。
343日ぶ り それでも打席を重ね、修正した。六回、先頭で回ってきた3打席目だ。カウント2‐2から大嶺のスライダーを右前打。昨年6月10日のオリックス戦(マツダ)以来、実に343日ぶりの安打だった。「変化球に対応し、バットの芯に当てることを心掛けた。長かったけど、よかったよ」と満足そうに振り返った。
試合前には感動的な出来事があった。フリー打撃で、ニックが柵越えを連発するたびに左翼席の鯉党から拍手が送られた。それは選手生命さえ危ぶまれた大けがを乗り越え、グラウンドへ戻ってきたことへの“復帰祝い”だった。これにはニック自身も「カープのファンは素晴らしい。温かく応援してもらって、うれしかったよ」と、思わず頬を緩ませた。
次に目指すのは、チームが勝つための一打だ。「打点を稼げばチームの勝ちにつながる。それが僕の仕事。今日は打点を付けられなかったので、修正したい」。今度は快気祝い代わりに、勝利を決める一発を鯉党に贈る。