「ＤｅＮＡ５-４広島」（６日、横浜）

　広島の松山竜平外野手（２７）が４点を追う八回に、自身初の２桁の大台に乗せる１０号３ラン。１点差とし、猛追ムードをチームにもたらせたが、あと一歩届かなかった。ただ７試合連続で３点以下の得点だった鯉打線にとって、松山の一発は勇気を与えたはず。中日に続き、ＤｅＮＡも２ゲーム差に迫り、その足音も聞こえてきたが、打線の奮起で突き放せ！

　このままでは終われない。七回に野村が３ランを浴び、ＤｅＮＡとの点差が４点に広がった。残る攻撃はあと２回しかない。完全に劣勢に立たされた野村鯉。しかし、松山の一振りが、完敗ムードを一変させた。

　みんながつくったチャンスだった。八回先頭の代打・広瀬が中前打で出塁し、丸も四球で塁を埋めた。菊池が三振に倒れ、１死一、二塁。松山が打席に立った。狙いは直球一本。すると山口が投じた２球目は、１５１キロの直球。もちろん見逃すはずもない。思い切り振った打球は左翼方向へ。フェアかファウルか際どい当たりだったが、白球は左翼ポールを巻くようにスタンドに入った。

　初の２桁となる１０号３ラン。これがプロ通算１３本目の本塁打だが、左翼方向へは初めてだった。「手応えはあった」。引っ張るだけではない。逆方向にも打てることを証明した一打だった。

　ただこの後は得点を奪えず、惜敗。「（１０本塁打は自分の中で）大きいけど、勝ち試合で打ちたかった」とつぶやいた。悔やんだのは走塁ミス。六回にランエンドヒットで一塁からスタートを切ったが、キラの右飛の打球を見ていなかったため、帰塁できず併殺。「ミスを取り返そうと、それしかなった。ああいうミスは命取りになる」と唇をかんだ。

　それでも松山の一発は、今後の戦いに影響を与えるはずだ。鯉打線は不振が続き、８月２８日のＤｅＮＡ戦から７試合連続で３得点以下だった。この日８試合ぶりに４点以上奪い、野村監督は「昨年はあと１本が出なかったが、今年は出ている。丸は上がってきているし、松山も調子がいい。あとはキラが打ってくれれば」と、打線の復調を感じ取っている。

　今の鯉打線の中心は、間違いなく松山だ。「走塁や守備ではチームを支えることはできない。自分はバットぐらいしかない」。４位で並んだ中日、ＤｅＮＡとの差は２ゲーム。激しいデッドヒートを制するためにも、松山は打つしかない。