投手王国で１１年培った技術をすべて若き左腕にたたき込む考えだ。中日時代から久本が行ってきた静岡県沼津市での自主トレ。来年１月の参加メンバーに２０歳の戸田を呼ぶことを明かした。

　「戸田を連れて行く。こちらから『行くぞ』と話して、もう宿も押さえた。キャッチボールをしていて驚かされた。これまで受けた中でも３本の指に入る。あいつの指にかかった時の球はすごい。ほんとチェンのよう」

　チェンは中日で通算３６勝し、昨季、大リーグ・オリオールズに移籍。ローテ左腕としてメジャー１年目に１２勝し、今季も７勝を挙げた。久本は中日時代に８年をともに過ごし、入団からエースとして成長する過程を間近で見続けた。

　広島移籍１年目の今季、キャンプから積極的に若手と交流。キャッチボール相手となった戸田の球は何度も受けた。そのたびに、チェン級の潜在能力を肌で感じさせられた。

　「まだ７球に１球ぐらいしかないけど（磨けば）チェンになれるものを持っている」。自主トレでは、中日流の英才教育を施し“鯉のチェン”へと化けさせる手助けをする。

　今季、久本は開幕ローテ入りするなど先発、中継ぎにフル回転。４３試合に登板し３勝４敗１セーブ。防御率３・００の成績を残しチームのＣＳ進出に貢献した。プロ入り１２年連続Ａクラスと勝つ術（すべ）を誰よりも知る男だ。

　一方、戸田は今季、３試合登板、防御率１２・４６に終わった。秋季キャンプでは１５日の西武との練習試合（南郷）で３回無失点に抑え高評価を得た。「先発ローテに入れるよう頑張りたい」と、来季への思いは強い。

　「若いのとやると僕も刺激を受ける」と久本も狙うは先発の座。ＦＡ移籍が確実な大竹の穴を埋めるべく、１４歳差の異色タッグが奮投する。