東出、不安激白「先が見えない」
広島の東出輝裕内野手(33)が2日、広島市内の球団事務所で契約交渉を行い、2000万ダウンの年俸7000万円で更改した。今年は春季キャンプで左膝前十字靱帯断裂の重傷を負い、プロ入り後初めて1軍公式戦出場なしで終わった。現在もリハビリ生活を送っており、16年目の来季は「先が見えない」と不安を抱えたまま臨む心境を明かした。
こんなにつらいシーズンは初めてだった。2000万のダウン提示に、「アップしたらおかしいでしょ」と自嘲気味に笑った東出。「特に今年は何もない」と淡々とした口調で話した。
悪夢の瞬間は今も忘れない。春季キャンプも終盤に差し掛かったころだった。1軍の沖縄遠征に帯同せず、2軍の日南キャンプに残留していた東出は2月24日に天福球場で行われた紅白戦に出場。本塁に突入し、倉のブロックを避けようとした際に左膝を負傷した。
今まで経験したことのない感覚が襲った。「足をやった瞬間、『終わった』と思った」。左膝前十字靱帯(じんたい)断裂。手術をし、退院後からはリハビリの日々。シーズン中の復帰は絶望となり「足も切れたし、心も切れた」と振り返った。
自分がいない間のチームは初のCS出場を決めた。その時は素直に喜んだが、「人生でこれだけサボった1年はない。車いすにも初めて乗ったし、松葉づえも1カ月使った」と自分に対し、悔しさがこみ上げてきた。
復活を目指す来季となるが、不安しかないのが本音だ。「先が見えないから、どういうふうになるのか。開幕?全くわからない。1年間全くやっていなかったわけだから。それで開幕1軍なんて見えてこない」と漏らした。恒例となっていたチームメートとの先乗り自主トレは「無理でしょう」と辞退。今オフは松原3軍チーフトレーナーの下、廿日市市の大野練習場でリハビリに専念する予定だ。
それでも23年ぶりの優勝を目指す野村鯉にとって、必要不可欠な存在だ。現在、左膝は打撃やダッシュもできる状態まで回復している。「やらないといけないのは分かっている」。来季16年目のシーズンを迎えるベテランが、悲壮な決意で新たな年を迎える。