バリ“1泣”八回2死から痛恨被弾

 「阪神1‐0広島」(29日、甲子園)

 広島のブライアン・バリントン投手(33)が1球に泣いた。八回2死から阪神・福留孝介外野手(37)に2号ソロを許した。七回2死までパーフェクト。8回2安打1失点と好投したが、打線が無得点に終わり、悲運の3敗目(3勝)を喫した。チームは首位攻防戦の初戦を落とし、2位阪神と1ゲーム差になった。

 本塁に背を向け、打球の行方を見届けた。そのままバックスクリーンを見ながら両手を腰にやり、現実を受け止めた。バリントンが0‐0で迎えた八回、2死から福留に決勝の中越えソロを浴びた。

 痛恨の87球目。「こういう試合は1球で決まってしまうもの。外のツーシーム。よく動いて効いていたボールだ。しっかり思うところに投げられたが、対応された。失投ではない」。潔く脱帽し、敗戦を受け入れた。

 今季最高の投球だった。二回。1死からマートンを141キロ直球で空振り三振、続いて、新井良が腰を引いて避けるほどのスライダーで見逃し三振を奪った。直球、変化球、制球ともに抜群だった。

 七回2死まで1人の走者も出さず、外国人史上初、94年の槙原(巨人)以来16人目となる完全試合の期待も膨らんだ。「非常にボールが動いて、低めに集めていい投球ができた。(完全試合は)知っていたが気にせず、1人ずつ抑えていった。気づいたら七回になっていた」。鳥谷にスライダーを左翼線二塁打とされたが、冷静に次打者を抑えた。

 今季チーム初完投。8回2安打1失点、8奪三振、無四死球で球数90。開幕から唯一中5日を守り、ここまで3勝。6度目の先発はチーム最多だ。野村監督は「文句のつけようがない投球」と、山内投手コーチは「ローテを守って、結果も出し続けている」と、ねぎらった。

 打線の援護なく、悲運の3敗目。それでも「野手はよく守ってくれていた」と、恨み言は一切なし。足を止めて、紳士的に報道陣に対応した。

 チームは依然、単独首位。バリントンは「皆が自分の役割を果たしている。今は野球が楽しい」と以前に話していた。1つの黒星で心を乱す男ではない。阪神に1ゲーム差に迫られたカープも同じだ。1つの黒星で、崩れるチームではない。

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