「交流戦、西武７‐０広島」（１３日、西武ド）

　前を見つめた。重い空気がベンチ裏の通路に漂う中、広島・戸田はうつむくことなくチームバスへ歩を進める。８連敗を喫したが、若鯉左腕が存在感を示した。

　三回まで無失点。０‐０の四回１死一塁でメヒアに左中間席へ先制２ランを許した。カウント２ボール２ストライクから高めに浮いた直球を狙われ「悔しい」と唇をかんだ。

　それでも五回は３人斬り。追加を与えず５回２失点だ。山内投手コーチは「攻めていた。いい投球だった」と試合をつくったことを評価した。

　急きょ決まった今季、初先発だ。１２日に先発予定だった前田が９日に左脇腹の張りを訴え、登板回避が決定。九里が前倒しとなり、１２日に先発した。この日が谷間となり、２回２／３、２失点（自責０）だった８日のオリックス戦（マツダ）が評価され抜てきされた。

　３年目の今季は、体幹を鍛えたことでフォームが安定。制球が定まり「腕がしっかり振れて、投球ができるようになった」。直球、変化球ともキレが増し、自信を持ってマウンドに上がることができている。

　黒星は喫したが、自信に変えられる好投だ。「また次もこういう投球ができるように頑張りたい」。出口が見えない中、背番号５３が光を放った。