黒田「最後はカープのユニホームで」
米大リーグ・ヤンキースから8年ぶりに広島に復帰した黒田博樹投手(40)が16日、広島市内のホテルで入団会見に臨んだ。「最後はカープのユニホームで投げたい」と決断に至った経緯を激白。その上で、ファンへの恩返しを約束した。松田元オーナー(64)とも優勝を誓い合い、「今度は自分がファンの人たちの気持ちを動かせれば」と、貫いてきた魂の投球で、24年ぶりの頂点を目指す決意を熱く語った。
想像を上回る会見場の熱気に、黒田も驚きは隠せなかった。詰めかけた40社、総勢150人の報道陣。壇上に上がると「ゴホッ」とせき払いした。実に8年ぶりとなる古巣復帰。「最後の決断」に至った経緯を、偽りのない言葉で語り始めた。
「帰ってきたな、という感じです。実際、広島に来る日までいろいろ、モヤモヤした気持ちもあった。広島に来てファンの声を聞いて、これで良かったかなという気持ちです」
2月10日に40歳の誕生日を迎えた。迫り来る最後の時。メジャー残留か、広島復帰か。「1秒、1秒考え方も変わっていた」と揺れる日々を過ごした。だが、野球人生の集大成を考えた時、脳裏に浮かんだのは「感謝」の気持ちだった。
2006年にFA権を取得。移籍情報が飛び交う中、真っ先に動いたのがファンだった。球場にはメッセージ入りの巨大な横断幕が登場。シーズンの最終登板では、背番号15の赤いプラカードを掲げた。この熱意に黒田は残留を決断。あの光景は今も忘れない。
「球場の雰囲気を見て自分自身も、心を動かされた部分がありました。恩返しじゃないですけど、多少なりとも帰って来たことによって、喜んでくれる人がいるのであれば。それは僕の中で、すごく満足できること」
20億円を超える高額オファーを蹴っての復帰。笑みを浮かべながら黒田は言う。「広島という、小さい街ですけど、僕のことを待ってくれる人がいる」。真っ赤に染まった球場で、魂を込めた1球を投げたい。だからこそ、ここに帰ってきた。
午前中には球団事務所を訪問。松田元オーナーと固い握手を交わした。「優勝しよう」。シンプルな言葉が心に響いた。「自分自身すごく、その言葉を聞いて胸が熱くなりましたね」。チーム24年ぶりの挑戦は、黒田の悲願でもある。
「もう30歳には戻れないですからね。40歳で最初のシーズン。人と違う強みはいつ壊れてもいい、いつ辞めてもいいと思ってマウンドに上がっていること。それが唯一、人ができないことをやっていると思う。そのマインドは変えずにいたい」
会見では、用意されたユニホームに袖を通さなかった。ここに19年目のこだわりがある。「僕はしたくなかった。2日、待ってもらえればね」。不敵に笑った。18日から沖縄キャンプに合流。戦闘服でグラウンドに立つ。黒田博樹、40歳。最後にして最大の挑戦が始まる。