さすが黒田じゃ!男気116球2勝目
「阪神2-7広島」(11日、甲子園)
広島・黒田博樹投手(40)が、8年ぶりの甲子園登板で今季2勝目を挙げた。制球に苦しみながらも6回を投げ7安打2失点。チームに今季初の3連勝と、今季7戦目にして初のビジター勝利をもたらした。殊勲のベテラン右腕は「チームが打線もつながって、ビジターで勝てたことが大きい」と、笑顔で収穫を口にした。
試合終了を見届けると、フーッと息を吐いた。笑みはない。だが、チームの勝利に安ど感はあった。今季最多116球の粘投。8年ぶりの甲子園での登板は珍しく制球に苦しみながら、6回を7安打2失点で2勝目を手にした。
4点リードで迎えた六回。1死から3連打で1点を失った。だが、ここからが真骨頂。四球を挟んで1死満塁から代打・新井良をボールになるスライダーで空振り三振に斬ると、関本は外角寄りのツーシームで中飛。五回までに88球。この回は28球を費やした。
「うまく(ベース上で球を)出し入れしようと思ったんですけど、細かいところでボールになった感じですね」
振り返ったのは二回、福留との対戦だった。フルカウントからの7球目、左打者の内角を狙った通称「フロントドア」が、少しだけ中に甘く入った。「四球よりは…と思って投げたボール。うまく打たれましたね」。打球は風にも乗って右翼ポール際のスタンドへ。黒田はボールの行方をじっと、悔しそうに追った。
だが、引き出しは多い。ここからパワーピッチングにシフトをチェンジ。同点の四回、2死三塁で上本を迎えると、3球目に151キロ。さらに7球目に152キロを計測した。キャンプ、オープン戦を通じて今季最速。「いつ腕が飛んでもいい。大事な場面だったので、目いっぱい腕を振った」。上本は四球で歩かせたが、続く梅野を遊ゴロに仕留め無失点。闘う背中をナインに示した。
9日の試合前練習。新助っ人のシアーホルツから質問責めにあった。「なんで日本に戻ったんだ」。20億円を超えるオファーを蹴って古巣復帰。「自分でも説明できないし、僕の英語力じゃ伝わらないからね」と、黒田は笑って言った。ただ敵味方に関係なく、敵地でも大きな拍手を受ける。「男気」-。人々の心に響いている。
これで3連勝。ともに8年ぶり復帰の新井が決勝打を放ち、2人で敵地連敗を6で止めた。「新井のタイムリーが大きかった。打線もつながって、チームが勝てたことが大きい」。粘って手にした2勝目。ベテランの執念がチームの勢いを加速させる。