野村 八回に暗転…まさか“ツバメ返し”
「ヤクルト5-2広島」(11日、神宮球場)
5勝目がスルリと逃げた。広島・野村祐輔投手(26)が2-0の八回に無死満塁のピンチを招いて降板。交代したジャクソンが同点打を浴びると、堂林の適時失策で逆転を許した。七回までの完封ペースから一気に暗転し、今季2敗目。痛恨の逆転負けでチームも2連勝を逃し、3位に後退した。
悔しさだけが胸中を支配した。ベンチから最後に姿を現した野村は、口を真一文字に結んだ。うつむいて、足早に歩を進める。八回にピンチを招いて途中降板。任された責任を全うできなかった自分を責めた。
「初回に点を取ってもらって勝ちたかった。(最後まで)投げきることができなくて、悔しい思いしかない。野手にも助けてもらっていたし…。自分が作ったピンチ。ジャクソンにも申し訳ない」
“魔の八回”だ。2-0で迎え、先頭の畠山に左前打を浴びると、大引の遊撃内野安打で無死一、二塁。続く中村の一塁側への送りバントを新井が三塁へ送球。野選となり、全ての塁が埋まった。新井は「三塁で常にアウトにしようと思っている。でも一塁で確実にアウトを1つ取るべきだった。僕の判断ミス」と声を絞り出した。
長打が出れば一打逆転の場面。緒方監督はジャクソンを送り出した。だが、今浪に同点の2点二塁打を浴びると、堂林の適時失策で勝ち越し点を献上。さらに勢いにのみ込まれ、計5点を奪われた。指揮官は「継投に迷いはなかった。二、三塁になった時点で、ジャクソンでいくと決めていた。終盤、ヤクルトのワンチャンスで流れを止めきれなかった」と振り返った。
黒田、福井、横山と開幕ローテに名を連ねた3投手が、故障や不調で出場選手登録を抹消される投手陣の緊急事態。野村は前回ヤクルトと対戦した4月27日、この神宮でプロ初完封を達成した。「もちろん、そういう気持ちはあります」。最後までマウンドに立ち続ける、という強い覚悟を持って臨んだ一戦だった。それが七回までの完封ペースから暗転し、チームも痛い敗戦で3位に後退。右腕は「悔しさしかない」を連呼した。
5勝に終わった昨季の雪辱を誓う今季。バスに乗り込む前「次、やり返します」。野村は短い言葉で前を向いた。黒星を力に変えて、新たなマウンドに立つ。今度こそ、勝利へとつながる道を切り開いてみせる。