戸田が救った“鯉の二刀流”が先発星
「交流戦、日本ハム2-3広島」(7日、旭川スタルヒン球場)
救世主じゃ-。広島の戸田隆矢投手(22)が6回を投げて4安打1失点。大谷から2三振を奪うなど、7奪三振の好投で3勝目を挙げ、チームを連勝に導いた。九里の中継ぎへの配置転換でローテ再編。慣れない地方球場で、今季2度目の先発を託された左腕が窮地を救った。旭川での勝利は1987年6月21日の大洋(現DeNA)戦以来だ。
迷いなく、逃げることなく内を突いた。今季2度目の先発登板。強打者が並ぶ打線にも、戸田は真っ向勝負を挑んだ。大谷から2三振を奪うなど、6回4安打1失点の熱投。3勝目は今季の先発初星だ。粘りの投球が旭川での29年ぶり勝利を呼んだ。
同点に追い付いた直後の三回。1死二、三塁で大谷を迎えた。「攻める気持ちは忘れない」と、宣言通りに初球は内角の直球。空振りを奪うと2、4球目も内の直球勝負。2-2から外のボール球で三振を奪った。続く中田も内角の直球で3球勝負。見逃し三振に斬ると、思わずガッツポーズが飛び出した。
「気持ちだけは負けないように、ビビらず投げ切ろうという意識。うれしかったです」
試合後、少しだけ笑みがこぼれた。二回、1死から田中賢、レアードの連打で先制点を許したが、以降は粘りの投球で最少失点。六回も同様に大谷から、外のスライダーで空振り三振を奪った。中盤以降は110キロ台のカーブで緩急を付けた。
5月13日・中日戦以来の先発。前回も6回2/3を5安打3失点と試合はつくったが、チーム事情で中継ぎに配置転換された。試合前まで右打者との対戦打率は・154。一方で左打者は・395と苦手にした。悩める背中を押したのは緒方監督。練習中、身ぶり手ぶりを交えて助言した。
「左がどうこうとか、考えなくていいんだ。打たれたら次の打者を抑えたらいいんだ。気にすることはない」
指揮官の言葉で大胆に内を突いた。「高2の修学旅行以来」という北海道で、熱狂的なファンに白星を届けた。旭川での勝利は1987年6月21日の大洋戦以来。10日が誕生日で、22歳でのラスト登板に「打たれるよりは、抑えた方がいいので」と控え目に笑った。
昨季、同一カード3連敗を喫した相手。緒方監督も「きょうは戸田でしょう」と殊勲を称えた。チームは連勝で2位・巨人と2ゲーム差。次回も先発が確実な戸田は、早くも次戦に目を向ける。「もっと信用されないとダメ。もっと頑張っていきたい」。無限の可能性を秘める22歳。前を向いて走る。もっと遠くへ-。