緒方監督、涙は日本一になってから!鷹でも大谷でもかかってコイ!
「セCSファイナル・第4戦、広島8-7DeNA」(15日、マツダスタジアム)
試合は最後まで緊迫した。九回、2死一塁。リードは1点。筒香を打席に迎えた。本塁打なら逆転の場面。広島・緒方監督は動じなかった。「中崎を信じていた」。空振りした白球が石原のミットに収まる。勝利の瞬間、ようやく笑みがこぼれた。真っ赤に染まった球場で叫んだ。
「ファンの皆さん。クライマックス突破、おめでとうございま~す!!」。リーグ優勝時と同じ決めぜりふで歓喜を誘った。
独走V、CS突破の裏に、変わる強さと、変わらない強さがある。この日も初回、田中の四球後、菊池に犠打を指示した。
今季、菊池は23犠打。昨季49の半分以下だ。機動力野球を掲げるチームにおいて、バント以上に盗塁、エンドラン、右打ちを指示。貫いた積極攻撃がリーグ優勝の原動力になったが、この短期決戦では違った。
勝利した3試合で菊池の4犠打を含む7犠打。そのほとんどが得点に絡んだ。貫き通す信念と柔軟な思考。その一方で指揮官は本音も語った。
「選手起用に迷いはなかった。ただ攻撃は機動力の中、もっと打たせていきたかった。バントが点につながる流れだったが、そこは自分の経験のなさ。勇気がまだなかった」
監督就任2年目、道半ばだ。失敗は糧に、経験は力になる。リーグ優勝を決めた9月10日の巨人戦。苦節25年の快挙に、涙を流すファン、選手、首脳陣。こみ上げてくるものはあったが、涙をこぼすことはなかった。信頼するコーチらと抱き合いながら「僕はまだ、泣きませんよ。目指しているのは日本一ですからね」と鼓舞した。
指揮官は昨季4位の反省から、選手とは対話を重視。感情を表に出して戦うなど変化を恐れなかった。一方で変えなかったのは準備と戦術。球団関係者は「消化試合は1つもなかった」と明かす。リーグ優勝決定後も球場入りはナイターでも午前9時前後。相手の分析に自軍の戦力把握。勝つための方法を探し続け、球団史上最多の89勝を挙げた。
勝利を追求すると同時に、数年先を見据えたチーム作りも貫いた。将来を担う鈴木や野間、西川らには今でもキャンプ並みの練習量を課している。早出に居残り特打。遠征先でもバットを振らせた。「何が正しかったのか結果が教えてくれる」。主力だけでなく全選手に目を配り、一丸の雰囲気を作り出した。
1週間後には日本一をかけた戦いが始まる。相手は日本ハムか、ソフトバンクか。信じるものがある。「最高に幸せです。カープの野球をやるだけ。十分、準備はできた。手応えを感じている。日本一目指して頑張ります」と指揮官。最強伝説はついに、最終章に突入する。涙は32年ぶりの日本一にとっておく。