野村「黒田魂」教えてもらった「1球の意図」つないだ勝利のバトン
「日本シリーズ・第2戦、広島5-1日本ハム」(23日、マツダスタジアム)
堂々とマウンドに君臨した。パ・リーグ王者を、広島・野村祐輔投手が緩急自在の投球で牛耳った。頂上決戦第2ラウンドを6回2安打1失点。「強力打線を相手にコースに投げ切ることができた」。最多勝と最高勝率を獲得した実力そのままに、初戦快勝の流れを継続させる粘投劇だ。
初回をしのぎ、勢いに乗った。2死一、二塁で第1戦にバックスクリーンへ本塁打を放ったレアードと対峙(たいじ)した。失投が許されない場面で、両コーナーに投げ分けて右飛。スコアボードに「0」を刻んだ。「序盤は慎重になり過ぎた部分があった。そこを乗り越えてからは自分の投球ができたと思う」。失点は四回の1点のみ。球数が増えても、武器とする制球力に陰りはなかった。
運命の出会いが野村を変えた。明大3年の時、米アリゾナ州にあるドジャースの施設で春季キャンプを行った時、初めて黒田と対面した。話を聞く中で「カープで会おうと言われた」。出会いから6年。昨季右腕が古巣に復帰し、言葉通りチームメートになった。
野球に取り組む姿勢や試合での意識の持ち方…。接点を持ってからさまざまなことを学び、吸収し、そして成長につなげてきた。黒田と同じように、自身の投球を振り返ってノートにメモを取るようになったのも、その一つだ。
課題を見つけ、反省を繰り返すことで変化してきたのは「自分が投げたい球を投げるのではなく、打たれない球を選択するようになった」。大事なのは1つ1つアウトを積み重ねること。明確に“1球の意図”を持ちながら、黒田がカープ復帰を決断した後に言った「1球の重み」を感じ、右腕を振り抜いてきた。
2連勝で北の大地・札幌に乗り込む。25日・第3戦の先発は、今シリーズを最後に現役引退を表明した黒田が濃厚だ。試合後のベンチ。背番号「15」がナインを出迎え、グータッチを交わした。「日本一になって黒田さんを胴上げしたい」。そう言い続けてきた背番号「19」が、最高の形でバトンをつないだ。