緒方監督 33年ぶり悲願へチーム一丸、ファン一体で戦う 恒例の新春対談で決意
3年目の指揮を執る広島・緒方孝市監督(48)を迎え、春季キャンプで2年連続で臨時投手コーチを務めることが決まったOB会長の安仁屋宗八氏(72)=デイリースポーツ評論家=が鋭くチームに迫る恒例の新春対談。リーグ2連覇と33年ぶりの日本一を目指すために必要なことは何なのか。カープを愛する2人が、互いに熱い言葉で語り合った。
◇ ◇
安仁屋「明けましておめでとう」
緒方「おめでとうございます。昨年はセ・リーグで一番、投手成績が良かった。それが優勝につながりました。安仁屋さんには春季キャンプで臨時コーチを務めていただきました。その成果が出たと思います。ありがとうございました」
安仁屋「とんでもない。マエケンが抜け、その穴を誰が埋めるかが大きな課題だった。それをクリアできたのも大きかった」
緒方「そうですね。そこが一番のポイントで、今年も同じです。黒田が抜けます。誰かに出てきてほしいと思っています」
安仁屋「1人じゃなくていい。何人も出てきてくれれば、チーム力は落ちない。僕は、福井に頑張ってもらいたい」
緒方「昨年も福井と大瀬良の2人がローテに入って、投げてほしいと期待していました。その2人が結果が出なくて。今年、リーグ連覇をするためには福井と大瀬良、若手で言えば岡田に頑張ってもらわないといけない。そしてジョンソンと祐輔(野村)がローテの中心で投げてくれれば、先発投手の頭数はそろう計算です。問題は左腕。戸田は昨年、いい投球をしながら自分の不注意で戦線を離脱しました」
安仁屋「本当に悔しい思いをしたのは監督だと思うんだが」
緒方「どんどん起用していきたかったんですけどね。オールスター前に初完封してすごく自信になったと思うんです。でも自らの不注意で投げられなくなってしまった。チームとしても残念だった出来事です」
安仁屋「左の先発は、できることなら3人はほしい」
緒方「3年目になる塹江がいいんです。球に力がある。キャンプは1軍スタートの予定で、どんどん経験して伸びてほしいと思います。昨年の秋季キャンプは、突然制球を乱して失点しました。その中で、彼も気が付いてくれたことがあると思うんです。1軍で勝つためにはリズムやフォームを固めて狙ったところに投げないと抑えられません」
安仁屋「若くて今後が楽しみな投手が多い。チャンスをものにしたときは、大きく伸びる。3回まではチャンスを与えてもいいと思う」
緒方「一度、失敗したからといって何も言いません。結果だけを見ているわけではないですから。失敗した次の姿を見たいんです。どういうふうに修正して、次につなげていくのか。若い選手は失敗の繰り返しです。チャンスは3回くらいは与えたい。でもそのチャンスは、与えられるものではなく競争の中でいいアピールをして、つかみ取る姿勢を求めたいと思います」
緒方「安仁屋さんには、今年も春季キャンプで臨時コーチをお願いしています。選手の練習姿勢を見ながら『この選手にはチャンスを与えてくれ』とか、そういう言葉を聞きたいです」
安仁屋「気が付いたことは言っていきたい。よろしくお願いします」
緒方「今の選手は、球数をあまり投げずに調整します。それも一つの練習方法だと思うけど、それが全てではない。ブルペンで球数を投げて肩、フォームを作る、覚えるという選手もいるはずなんです。偏ってほしくはないし、いろんな方法を学んでほしいと思います。投手コーチはたくさんいるけど安仁屋さんは“生き神様”ですから。いるだけで存在感がある。安仁屋さんが発信する言葉は新鮮に映ると思うし、成長する一つのきっかけにしてほしいと思っています」
安仁屋「若い選手には、しっかりと競争してもらいたいと思っている」
緒方「昨年は中崎、今村が頑張ってくれましたけど、今年もそのポジションをそのまま任せるのではありません。彼らが人には絶対に譲らないという姿勢を見せて勝ち取ってほしい。長いシーズン、投手陣全体が大事だということを去年1年で大きく気づかされました。今年も投手陣全体で戦っていきたいと思います」
安仁屋「昨年の12月に、九里と一緒になることがあって、そのとき彼は先発を目指したいと言っていた。『それが当たり前だよ』と言ったんだ」
緒方「九里は昨年、本当によく投げてくれました。先発にロングリリーフなどフル回転してくれました。一昨年の秋季キャンプで、彼はものすごい球数を投げた。安仁屋さんがずっと言い続けている、投げ込む練習がいかに大切かということを、彼は理解したと思いますよ。また、今年の日程を見るとWBCの影響で開幕が3月31日。例年より遅く、4月は6連戦が続くんです。この日程では、投手陣をしっかりと整備しておかなければ、出だしで失速してしまうでしょう。一昨年は開幕後に7連敗して4位。今年は最低でも勝率5割以上の戦いをしていきたいです」
安仁屋「新人は投手を中心にとった」
緒方「黒田が抜け、精神的にも大きな柱がいなくなります。ドラフト1位の加藤、3位の床田は1軍の競争に入ってきてほしいです。加藤は体が丈夫で投げっぷりが良くてハートも強そうな印象。左腕の床田は、緩急が使え、打者が打ちにくそうにしていました。新戦力を加えながら、競争で勝ち残った戦力で戦っていきたい。それは野手も同じです」
安仁屋「その野手はどうか」
緒方「昨年の戦い方を見れば1~3番とセンターラインを固めて戦うことができた。石原がどっかり座りショートに田中、セカンドに菊池、センター丸と、背骨ができた。その中で鈴木の活躍。今年はもう一度、ブレークしてくれないか、もう一度「神って」くれないかと思っています。それと同時に、彼は今年5年目になるわけですからね。最も良い時期。同じ世代で競争しながら、鈴木に負けないという選手が出てきてほしい。これも投手陣と一緒で、野手陣も変化を恐れずにやっていきたい。固定はしません。でも田中、菊池、丸らは結果を出す自信があるし、簡単には譲ってはくれないでしょうね」
安仁屋「石原は今年で38歳。会沢にも頑張ってもらわないといけない」
緒方「彼に頼りっぱなしではいけません。会沢、磯村など石原を脅かす存在が出てきてほしいですね」
安仁屋「会沢には、常にお前が正捕手になり石原が抑え捕手でいいと言っている。それができればまだ強くなると言ってきた」
緒方「昨年の野村は最多勝と最高勝率の2冠に輝きましたけど、石原の存在が大きかった。石原は黒田に育てられたと言ってもいいでしょう。今度は石原が野村を育てたんです。次は野村の出番。どんどん首を振って、こう投げるんだとか、お互いに助け合ってやってほしいです」
安仁屋「新井についてはどう考えているのか」
緒方「今年40歳ですか。全試合、全イニングは体力的に難しい。でも、成績やそれ以外のことで素晴らしい活躍をしてくれました。勝つために彼の存在は不可欠ですし、選手にいい影響を与えています。まずはケガなく彼らしい泥くさいプレーを見せてくれるだけで、こちら側はありがたいと思っています」
安仁屋「緒方監督としても去年はたくさんの経験をした。日本シリーズでは、短期決戦の難しさを知った。いろいろなところで日本シリーズ第6戦のジャクソンの使い方(2死満塁から押し出し四球。投手のバースに適時打を浴び、さらにレアードに満塁弾を被弾)がどうだったのかと言われているが」
緒方「交代のタイミングは押し出し四球直後だったと思います。そのときは、1点を勝ち越された後に投手が打席へ。投手なので抑えてくれるだろうと思っていました。ただ、2点差になった時点で交代しなければいけなかった。これは自分の中で大きな反省、勉強でした。今年は短期決戦を勝ちきれるように、采配の中で生かしていきたいと思います。負けた責任は私にあります。選手は思いきってやってほしいです」
安仁屋「今年へ向けての意気込みは」
緒方「2連覇、日本一ですね。ファンの人には『日本一をお願いします』と言われ、その言葉は自分の胸の中にすごく染みています。われわれはリーグ優勝では決して浮かれていません。ただ、昨年のようにゲーム差が開いた戦いには絶対にならないと思っています。開幕から勝率5割以上をキープして、夏場以降、本当の勝負でいい形で戦いたい。優勝のための条件の一つがホームでの白星だと思います。あの声援は選手に勇気をくれますし、相手には脅威です。ファンの力もぜひ必要なので、チーム一丸、ファンと一体となって戦いたいと思います」