広島・鈴木誠也のフォームは、右打者のお手本 谷佳知氏が分析
デイリースポーツ評論家・谷佳知氏が、リーグトップタイの53打点を記録している広島・鈴木誠也外野手(22)の打撃を連続写真とともに解説する。同9位の打率・303、同3位の15本塁打と打撃3部門で好成績を残す鯉の4番打者。そのスイングの魅力、長所はどこにあるのか。同じ右打者として現役時代に安打を積み重ねてきた同氏が、現状を分析する。
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鈴木のスイングは一つ一つの動作が基本に忠実で、癖がない。年齢、レベルを問わず、すべての右打者の「お手本」となる、理想的な打撃フォームと言っていい。
連続写真の打席は遊ゴロに打ち取られたが、随所に彼の良さが見て取れる。まず目を引くのが、好打者の必須条件である「トップの位置の安定」だ。
バットを引いて構えた写真(1)から、投球に合わせてさらに後方にバットを引いた写真(8)の「トップの位置」まで手の位置が上下にぶれず一定している。こうした形ができるとスイングが安定し、必然的に投球を捉える確率も上がってくる。
「体重移動」も申し分ない。
左足を上げ始める写真(3)からミートする写真(11)まで重心が低く保たれ、頭の位置が変わらない。写真(6)~(8)ではしっかりと左肩が投手方向に入り、それでいて前に突っ込まず、少々タイミングを崩されても対応できる体勢が作れている。写真(10)の腕の使い方もいい。内側から最短距離でバットを出す「インサイドアウト」のスイングが実践できているので、広角に打ち返すことが可能になる。
筋力が強いので、上半身や上げた左足をひねり、その反動を利用して打つ必要がない。大きく体を回さなくてもボールを飛ばせるところは、彼の特徴の一つと言えるだろう。
あえて注文を付けるならば、写真(10)で左膝が少し開き気味になっているところか。投球が低めなので仕方ない部分もあるが、もう少し内側に膝を絞ることができれば言うことはない。
交流戦終盤は結果が出なかったが、スイングの基礎部分に修正点は見当たらない。高卒5年目でまだ22歳。壁にぶつかることもあるだろうが、経験を重ねる中で配球の読み、打席での対応力をさらに磨き、球界No.1バッターを目指して欲しい。