大瀬良、笑った 藤浪の死球に負けず…8勝目でマジック26
「阪神3-5広島」(16日、京セラドーム大阪)
広島・大瀬良大地投手(26)が左腕に死球を受けながら、113球の熱投で今季8勝目を挙げた。5回2/3を投げ7安打2失点で、阪神・藤浪との初の投げ合いを制した。チームは4連勝で貯金は最多の29とした。前夜再点灯した優勝マジックも1つ減らして、26とした。
とっさの行動に大瀬良の優しさがにじみ出た。1点リードの二回の攻撃。1死から藤浪が投じたすっぽ抜けた球が、左腕を直撃した。投手への死球に京セラドームは騒然。帽子を取って頭を下げる藤浪に大瀬良は「大丈夫、大丈夫」と倒れ込みながら笑顔を向けた。
「人生初の死球なので痛いです(笑)。でも、わざとじゃないと分かっているので、大丈夫と言いました」
試合後も決して藤浪を責めなかった。14年オフ、前田(現ドジャース)らと都内の施設で合同自主トレを行い、意気投合した。昨秋、侍ジャパンに招集された時も食事に出掛けるなど、交流は続いている。だから、藤浪の2軍再調整に胸を痛めていた。
「僕も内角に投げるのは得意じゃなかった。“気持ち”だと思うんですけど…」。最初は連絡するのもためらっていた。「いっぱい連絡が来ていると思うし、心配されていると気を使わせるのも…」。ただ、右腕は放っておけなかった。
6月に入ると、LINEで激励した。「下(2軍)でいい時間だと思って過ごします」という返信に胸をなで下ろし、「僕も下に落ちないように頑張るよ」と健闘を誓い合った。チームこそ違うが気心知れた仲。これが大瀬良の人柄だ。マウンドでは優しさを力に変えて右腕を振った。
前回9日・中日戦(ナゴヤドーム)は5回2/3を投げ10安打7失点。今季初黒星を喫し、8日に初点灯した優勝マジックを消滅させた。この日は右腕にとっても大事な登板だった。「ちょっと腕が上がらない部分もあったけど、言い訳にならない。その中で修正しないと」。死球の痛みに耐えながら、五回まで無失点。六回に2点を失い、1点差とされたところで途中降板となったが、今季8勝目を手にした。マジックも26に減らした。
「調子は決していいと言えなかったけど、石原さんがいろんなボールを使ってリードしてくれた。球数が多く、イニング途中で降板したのが悔しかったです。次は頑張ります」
藤浪との初対決は何とか制した。次回こそ納得のいく白星で心の底から笑う。