【新井独占手記】プレッシャーと闘った4番・誠也 優勝で全て報われる
37年ぶりリーグ連覇を果たした広島・新井貴浩内野手(40)がデイリースポーツに喜びの独占手記を寄せた。不惑を迎えたプロ19年目の今季はチーム最年長として、黒田博樹氏(42)が抜けたチームを支えた。頼もしく成長した後輩たち、また自身の経験を振り返り、4番・鈴木誠也外野手(23)への思いを語った。
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今年も優勝させてもらって、本当にうれしい。甲子園は自分にとって思い出がたくさん詰まった球場だから。アカ(赤松)が病気をして、誠也(鈴木)もケガで離脱して、本人たちが一番悔しいと思う。一緒に喜べたのは本当にうれしかった。
連覇は難しい。今年は間違いなく険しい道になるだろうと思っていた。去年はノーマークの中、開幕から一気に駆け上がった。今年はリーグチャンピオンとして迎える年だったし、他球団もエース級をぶつけてきた。マークが厳しくなる中でみんなが力を付けた。広輔(田中)、キク(菊池)、丸を中心に彼らもよく頑張っていたし、そこに安部も成長して素晴らしい結果を残している。
まっちゃん(松山)も出だしこそつまずいたけど、誠也が離脱した後なんて十分過ぎるぐらい頑張っている。龍馬(西川)も去年よりワンランク上がって、出場機会が増えている。野間、崇司(上本)にしたって、控えの若い子たちもレベルアップしている。そういう姿を見て頼もしく思うし、本当にうれしい。
もう、自分の成績には興味がない。いいところで打ちたいという気持ちはあるけど、試合に出なくても勝てばうれしい。去年初めて優勝して、あれだけみんなに喜んでもらった。今年も応援してくれている人のために頑張りたい、喜ばせてあげたいという気持ちだけ。体力的にしんどくなってくるけど、気持ちがまだ燃えているから体は動いてくれる。
黒田さんが昨年で引退された。数字的に10勝がなくなるわけだから痛いけど薮田、岡田ら若い投手の頑張りが大きかった。ブルペン陣もザキ(中崎)、猛(今村)、イッチー(一岡)を中心に一つになって頑張っていた。
今の子たちは現役を一緒にやっているから黒田さんがどういう考えで取り組んで、どういう気持ちでマウンドに上がっているか、フィジカル的なものもメンタル的なものも見てきている。そういった意味で黒田さんが残したものは大きい。黒田さんがいなくなっても、黒田さんが残したもので、投手陣の力も上がっていると思う。
今年4番を打った誠也は最後ケガで悔しい思いをしたと思うけど、素晴らしい1年になったと思う。4番はみんなの期待にたくさん応えられる選手。いろんなプレッシャーを感じながら、彼自身すごく成長したと思う。自分からほとんど言うことはなかったけど、何度か話をした。誠也が聞いてきたら会話もした。4番とエースは経験した人にしか分からない苦しさがある。だから孤独。いろんなものと闘わないといけない。
自分の時は相談できる人がいなかった。金本さんがいなくなってすぐ4番を打って、03、04年の2年はつまずいた。当時の4番は外国人、その前が江藤さん。浩二(山本)さんは監督だった。振り返ったら苦しかったことばかり覚えているけど、あの時があったから今があると思える。だから誠也が打てなくてイライラしたり、悔しがったりするのはすごく分かった。自分もそういう経験をしてきたから。
でも、優勝したら全て報われる。苦しかったこと、つらかったことが報われる瞬間が優勝の時だと思う。次は日本シリーズ。でもその前のクライマックスシリーズに向けていい準備をしたい。最後の最後、みんなで喜んで今年を終わりたい。(広島東洋カープ内野手)