「プロ野球ドラフト会議」（２６日、グランドプリンスホテル新高輪）

　広島は１位で中村奨成捕手（３年）＝広陵＝を指名。中日との２球団競合の末、緒方孝市監督（４８）が交渉権を引き当てた。ドラフト１位の１回目の入札で高卒捕手が重複したのは史上初。今夏の甲子園を沸かせたアマＮｏ．１捕手は、新人王獲得、トリプルスリー達成を目標に掲げた。

　“相思相愛”が結実した。広島がくじを引き当てた瞬間、中村の表情はピクリともしなかった。しかし、緒方監督の「早く会いたい」という言葉を聞くと、ようやくはにかんだ。中村の喜びは誰の目にも明らかだった。

　「広島が（抽選で）選んでくれていると思っていました。うれしかったですけど、驚きもあって表情が変わらなかった。本当はにやけたかったんですけど、（にやけて）満足していると思われたくなかった」

　中日と２球団によるくじ引き。学校の会見場でテレビを見つめる目は鋭かった。不安はない。前夜には最高の瞬間をイメージして眠りに就いた。後は天命を待つのみ。予感的中のドラフトだった。

　目標を聞かれると、はっきりとした口調で力強く即答した。「やるからには、１年目から試合に出て、新人王を狙いたい」。将来的な目標には「足も生かして、トリプルスリーを目指したい」と掲げる。高い身体能力を持つ中村なら達成できそうな予感を漂わせる。

　地元広島の廿日市市出身。２軍の大野寮は自宅から徒歩で行ける範囲だ。「小学生の頃に栗原健太さんのユニホームを着て市民球場へ応援に行っていました」。すでにカープのユニホームには袖を通し、“試着”は十分できている。

　また、チームには白浜、野村など同校のＯＢも多い。「分からないことだらけで入るので、先輩方がいるのはすごく心強い」とホッとした表情を浮かべた。

　夢舞台を前にしても気持ちに緩みはない。「ライバルになる選手はもうフェニックス・リーグで練習している。これからは、野球でご飯を食べている人がライバルになるんだから、それぐらいの練習をしないといけない」と中井監督から言い聞かされた。今も後輩と一緒に練習し、１日５００スイングを日課に振り込んでいる。

　まさに運命の導きだ。野球の神様が引き寄せた縁。広島のスターとして輝きを放ち続ける。