衣笠氏の後輩・高橋大 プロ初安打にマルチ 追悼試合“鉄人魂”胸に第一歩
「広島2-4阪神」(30日、マツダスタジアム)
大先輩に捧げた。高卒6年目の広島・高橋大樹外野手(23)がプロ初安打を含む2安打をマークした。23日に他界した衣笠祥雄氏は、龍谷大平安(旧平安)の先輩であり、カープの先輩。くしくもその衣笠氏の追悼試合で、同じ系譜を受け継ぐ後輩が一歩を踏み出した。チームは延長の末に敗れて5連勝でストップしたが、かつてのドラ1が“鉄人魂”を胸に再び連勝街道に導く。
大きな一歩を踏み出した。高橋大が記念すべき初安打を含むマルチ安打をマーク。敗戦の中での明るい材料。高校、そしてカープの大先輩の追悼試合で一生記憶に残る一打を放ち、安どの表情を浮かべた。
「やっと出て良かったです。(生きて)見てくれていたら、衣笠さんの喜ぶ顔が見られたのかなと思います」
Hランプをともしたのは二回1死走者なし。14年6月19日以来4年ぶりの先発出場で、プロ通算9打席目だった。カウント2-2から岩貞のスライダーに食らいつき、打球は左前へ。12年度ドラフト1位の大器は頬を緩め、同期で同2位入団の鈴木もベンチ最前列で強く手をたたき、喜びを表現した。
「追い込まれたので、ファームでやってきたように三振しないように入りを変えた。ブンブン振らないでコンパクトにいったのが良かった」。高橋大は直後に先制の本塁を踏み初得点も記録。3打席目の六回1死でも左前打を放った。
安打への思いは人一倍強かった。衣笠氏の追悼試合として行われた今回の3連戦。その第1戦前には「応援してもらっていた。何とか打ちたい」と力を込めていた。ウエスタンで打率・370、4本塁打、10打点の好成績を残し、4月24日に昇格。その前日23日の逝去だったため衣笠氏に勇姿を見せることはかなわなかったが、弔いの一打にはなった。
思い出の言葉がある。13年1月、高校時代の恩師・原田監督の計らいで京都の焼き肉店で衣笠氏と会食。その際、プレゼントされた色紙に記された言葉が「忍耐」だった。ドラ1で入団しながらも期待に応えられず、2軍で苦労していく中でも“鉄人魂”を胸に刻み、初安打に結び付けた。
少し早い「母の日」のプレゼントにもなった。この日の試合前の午前中に「今日スタメンだから」と電話で母・寿子さん(50)に伝えた。「(球場への招待の電話は)ほとんどないです。あとがないと思っていたと思う。電話をくれるぐらいのことなので、打ってほしかった」。大阪から急きょマツダスタジアムに駆けつけて観戦し安どする母に、試合後には感謝を込めて記念のボールを渡した。
「負けてしまったので、次は勝ちにつながるバッティングをしていきたい」
チームの連勝は5でストップした。それでも3、4月を17勝10敗で貯金7、2位に2ゲーム差の首位で通過。緒方監督は「また明日からしっかり戦っていきたい」と前を向いた。5月攻勢とともに、高橋大も躍進ロードを突き進む。