大瀬良 5年目の進化の要因 黒田のように…本格化右腕への歩み
広島・大瀬良大地投手(26)が好スタートを切った。今季はここまで6試合に先発し、4勝2敗、防御率2・27。5日・ヤクルト戦(神宮)では3年ぶりの完投勝利を挙げた。野村、薮田を欠く中で、先発ローテの軸として奮闘する右腕の好調の要因に迫った。
変化を恐れず進化を追い求めた姿勢が実を結びつつある。17年と18年のデータを比較すると変貌は明らかだ。全球種の被打率は・255から・210に改善し、直球の被打率も・258から・222に低下した。大瀬良は「真っすぐに力強さが出たのと、バッターがタイミングを取りづらいのもあると思います」と冷静に分析する。
【1】新フォーム
大胆な投球フォーム変更が奏功した。オフからOBの黒田博樹氏のように左腕を高く上げ球威を追求。今季から解禁された2段モーションも積極的に取り入れた。これまで試行錯誤を繰り返してきたが、ようやく理想の形に近づいたようだ。
【2】プレート
マウンドからの景色も変えた。17年は左打者に対して被打率・292と苦戦したため、プレートを踏む位置を一塁側からプロ1年目と同じ三塁側に。「(左打者への)ストレートの角度がなくなっていた。横の角度を付けて左バッターに食い込んでいくイメージ」。その結果、被打率は・218まで下がった。
【3】カットボール
劇的な改善を見せたのはカットボールだ。17年は・381と打たれていたが、今季は・133と圧倒する。左打者に対して軌道が「膨らんでしまう」という課題を克服するため、より直球に近い軌道から打者の手元で変化するように投げ方を工夫。握りを変えるのではなく「フォーシーム(直球)の握りのまま手首の角度をずらすことで、いいときは真っすぐの軌道の中で動いてくれる」と手応えを明かす。
今季は威力ある直球を武器にストライクゾーンで積極的に勝負する。球数減につながり、5日・ヤクルト戦で今季チーム唯一の完投。被本塁打6はリーグワースト2位タイだが、ストライク先行を継続してきた結果だ。
「今は真っすぐがいいのでストライクゾーンの中で散ってくれたらいい。ホームランはランナーがいない状況であれば、次のバッターに切り替えられる」
今後は新たな引き出しを開ける準備がある。相手との駆け引きの中で「逃げるボールを頭に入れさせることも大事」とフォークの本格解禁もその1つだ。「まずは続けていくことが大事。対策を練られたら配球も考えていきたい」。球界を代表する本格派右腕への道を再び歩み出した。