復興の時に力を与えるのが野球でありカープ「日本一届けたい」松田オーナーインタビュー
「広島10-0ヤクルト」(26日、マツダスタジアム)
球団史上初のリーグ3連覇を成し遂げた広島東洋カープ。常勝軍団を築き上げた松田元オーナー(67)にデイリースポーツ中国本部の宮田匡二本部長(60)がインタビューし、今季のチームや緒方監督への評価、引退する新井との思い出、今後のチーム作りなどについて聞いた。
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-リーグ3連覇。おめでとうございます。
「昭和の時代に5度優勝し、平成に入ってこれが4度目の優勝。平成最後の年に優勝できて、なんとかバランスが取れた」(笑)
-ぶっちぎりの優勝でした。選手が成長した一番の要因は。
「自信だろうね。特に野手は脂の乗りきった選手がそろっている。兄弟みたいな感じでがっちりとスクラムを組んで、勝負どころで高い集中力を発揮して相手をのみ込んでいった」
-ケガ人が出ても、その穴を埋める選手がすぐに出てきました。
「レギュラークラスより、ちょっと下めの世代がカバーしてくれたね。ドラフト、育成がうまくいっている結果が出た。あとはドミニカ。野手はバティスタが出てきたし、投手でいえばフランスア。フランスアがいなかったら、今年の結果はなかったわけだから」
-シーズン中は緒方監督のシビアな采配も見られました。
「監督として勝負強くなったというか、勝つ時は必ず勝つんだという強い気持ちが、厳しい用兵に表れていた。決して緩めることがなかったね」
-オーナーも高く評価されている。
「そうだね。評価は高いよ。朝早くから球場に来て、ビデオで前夜の全試合をチェックしている。そんなことまでしている監督は一体何人いるのかと思ったりする。いろんなことに対して、丁寧に一生懸命に取り組むタイプ。努力の成果が表に出てきて、3連覇につながったと思う」
-今季も丸の働きは見事でした。
「結果を残すだけでなく、みんなをしっかりと引っ張っていってくれた。丸がチームリーダーとすれば、新井はチームの象徴的な存在。とにかく楽しそうに野球をやっていた。そういう姿を見ると、こっちも心が温まるし、選手たちも元気づけられる。“長兄”である新井がいて、次に丸がいることで、チーム全体がガチッとスクラムを組めていた。手の掛からないチームになったなと感じる」
-ただ、新井選手は今シーズン限りで現役生活を終えます。
「8月に引退すると聞いて“ダメだ”と言ったんだが、1カ月間、考えた末の答えだからしょうがない。若い選手が伸びてきて自分の立場を理解したのだろう。彼は心で考える人。今回の決意はそのイメージに結びつく」
-若い頃の印象は?
「新人の時、キャンプから帰ってきてサードの練習をしているのを見たら、スローイングがひどかった。これは大変だと思ったが、ヘッドコーチの大下(剛史)さんら、コーチ陣が根気よく鍛えていたのを思い出すよ」
-自分でセンスがないと話している。
「彼は駒大の先輩である野村謙二郎の推薦もあって、獲得に至った選手。その時は“獲ってもいいけど”という感じの選手だった。巨人に入団した二岡とは同期で、ウチは二岡の逆指名を取れなかった。そういういきさつがある。しかし、野球人生の勝利者は間違いなく新井ですよ」
-今後のチーム作りについてはどのようにお考えですか。
「投手もアドゥワら若い子がどんどん出てきているし、昨年、今年と若くて素材のいい投手も数多くドラフトで獲得している。ただ、投手に比べると野手は下からの突き上げが物足りない。その辺りが今後の課題になってくる。今の先発メンバーは丸や菊池ら28、29歳の選手が中心だが、その次の世代、20歳前後の世代を充実させて、鈴木誠也を中心とした次の塊を作っていく必要がある」
-今年は7月の西日本豪雨で広島も大きな被害を受けました。そんな状況での優勝は大きな意味があったように思います。
「少しでも被災した方の力になれればと思っていた。そもそも球団の生い立ち自体がそうだからね。広島に原爆が落ちて、その4年後に球団が誕生し、翌年にはリーグに参加した。今回の豪雨災害もそうだが、復興の時に大きな力を与えるのが野球であり、カープじゃないかと思ったりしている」
-リーグ3連覇を達成し、あとは日本一ですね。
「昭和に日本一に3度なって、平成に入ってまだ1度もなっていない。平成も今年が最後だし、やっぱり日本一にはなりたいね。特に今年は西日本豪雨もあったので、カープが日本一になって、多くの人の元気の源になれればと思う」
-ありがとうございました。