カープ3連覇の裏側 「1点」へのこだわりと流れ呼び込む好守
ぶっちぎりの強さで球団史上初のリーグ3連覇を飾った広島カープ。阪神をはじめとする他球団を寄せ付けなかった強さの秘密はどこにあるのか。デイリースポーツの広島取材班が3連覇を飾った裏側に迫る。
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「逆転のカープ」の呼称はすっかり定着した。リーグ3連覇を達成した今季もリーグトップとなる38度の逆転勝ち(26日現在)。試合序盤にビハインドを背負っても、ジワジワと追い上げ、終盤にひっくり返す。ゲームセットの瞬間まで、諦めない姿勢で戦い抜いた。
迎打撃コーチは逆転勝ちの要因に「高い集中力と、打席に入るまでの準備」を挙げる。打席へ向かう前は必ず投球チャートを見返し、相手投手の球種や傾向など、データを入念にチェック。打撃コーチの助言に耳を傾け、頭を整理した状態で、打席に入っている。
選手層の厚みを生かした豪華な代打攻勢もカープの武器だ。松山が一塁でスタメン出場した場合、ベンチには新井、バティスタら、レギュラークラスの打者が控える。試合前の打撃練習では中継ぎ投手を想定。たとえ先発投手に苦戦しても、代打陣の一打から流れを変えることができる。
大量ビハインドの試合中、東出打撃コーチは「淡泊にならないように」と伝えているという。1試合の得点ノルマは4~5点。「まず1点返そう」が合言葉。どんな展開でも無駄な打席はない。個人成績にはね返ることはもちろん、翌日以降の試合につながる。こうした1点1点の積み重ねが、劇的な逆転勝利を生むというわけだ。
東出コーチは「守備も大きい」と言う。田中、菊池、会沢、丸が形成するセンターライン。外野陣も丸、鈴木の右中間コンビに野間が加わり、リーグ屈指となった。守備のほころびから追加点を与えず、好守で攻撃への流れを生んでいる。
8月31日ヤクルト戦(神宮)が象徴的な試合だ。5点ビハインドの七回に代打・バティスタの2ランなどで1点差に迫り、九回に野間の犠飛で同点。田中、丸、菊池も美技を連発して中継ぎ陣も踏ん張ると、延長十回に丸の勝ち越しソロが生まれた。試合後の緒方監督は「今日は守り勝った」と満足そうにうなずいていた。
不動の3番として打線を引っ張る丸は「どんな展開であろうと、やれることは限られている。しっかりできることを打席の中でも、守備でもやりたい」と力を込める。併殺崩れでも全力疾走は当然。チームに浸透したカープ野球が、リーグ3連覇の偉業を呼び込んだ。