4連覇目指す緒方カープの試行錯誤…3番探し&注目の左腕 横山竜士氏の視点
宮崎・日南で第1次春季キャンプを張る王者・広島はこの3年同様、活気ある“鍛錬”を続けている。何より今年から背番号1をつけた主砲・鈴木に、より凄みが増した。2年連続MVPで3連覇に貢献した丸がFA権を行使してライバル球団・巨人に移ったものの、代わりに人的補償で来た長野との“ランチ特打”で快音連発。鋭い打球が柵越えするたびに熱心な鯉党がヤンヤの拍手を送り、これに手を振って応える様はかつての「山本浩・衣笠」並の貫禄を感じさせた。
長野もまた新天地でハツラツとした動きではやナインに溶け込んでいた。バックネット裏で見つめていた巨人関係者が「うちにいたころにない姿だね」と言ったが、常に注目を集める老舗球団では心の奥底に隠していた“本来の明るさ”が自然に出せるようになったのかもしれない。それが緒方カープの持つ力ならば、今年もセの主役は動かない。
しかし、1年間カープの戦いを見つめている野球評論家・横山竜士氏は、厳然として存在する“丸の穴”を指摘。緒方監督はその大きな穴を埋めるべく、試行錯誤しながら格闘中という。
「2年連続MVPの丸が抜け、誰を3番に据えるのか。これが大きな問題。鈴木の4番と菊池の2番は固定なので、3番はやはり左にしたい。実力的には松山だが、緒方監督は1、2、3番は足のある機動力を使える選手を置きたいと考えているようです。となると安部もしくは…」
今年5年目で昨年ブレークした野間が守備だけを考えれば丸の代役にはなるが、打率・306、39本塁打、97打点で2年連続MVPに輝いた主砲の活躍はまだ望めない。横山氏が1番手に挙げた安部は昨年こそ不振にあえいだものの、2年前は勝負強い打撃を見せて打率・310の好成績を残した。足もあって代役候補にふさわしいが、現在1番を任せている田中も候補として考えている模様だ。
「確かにパンチ力のある田中を3番に入れ、代わりに野間を1番にすればバランスはよくなるでしょうね。ただ、1番で3連覇に貢献してきた田中が3番というポジションで持ち味を出せるかどうか…こればかりはちょっとわかりません」
“3番探し”の日南キャンプ。候補が複数いるからこそ、首脳陣はジックリ腰を据えて検討を重ねることになるが、試行錯誤は打線に限ったことでない。4連覇を目指す上で投手力の再整備も重要な課題。そこで、横山氏が推す投手が意外で面白い。「今年で3年目の床田です」。床田寛樹、23歳。ルーキーだった一昨年、巨人戦でプロ初勝利を飾った左腕である。
床田はその巨人戦後、試合中に左肘を痛めて戦線離脱。左肘関節内側側副靱帯再建手術と尺骨神経剥離手術を受け、昨年8月に2軍復帰するまでの長い時間をリハビリに費やした。140キロ後半の速球にタテに割れるカーブを武器にルーキーイヤーから先発ローテ入りした左腕とあって、首脳陣の期待も高い。今年1軍キャンプに帯同し、ブルペンでも持ち味の回転のいい球を投げ込んでいる。
「長いリハビリの間にしっかりと自分と向き合ってきた印象を受けます。左の先発はジョンソンだけなので彼が入ることによってバリエーションが増えますね」
現状、先発陣はジョンソン、大瀬良、野村までが確定で、岡田、九里が続く。そこに前述の床田も候補として連なり、さらに昨年中継ぎでブレイクしたフランスアの再転向案に加え、アドゥワの先発案もあるとか。「佐々岡投手コーチは中崎と一岡以外の投手は先発の調整をさせると言ってます。そのあたりも含めて幅広く可能性を探っているんじゃないですか」と横山氏。
大黒柱だった丸が抜けたことで、緒方カープはより競争意識を全面に出すようになった感がある。日南での試行錯誤は、第2次キャンプ地の沖縄でも続くだろう。“V4シフト”が固まるのは3月のオープン戦か、それとも開幕直前か。まずは、丸なき「3番」が誰かに目を凝らしたい。(デイリースポーツ・中村正直)